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内村航平34歳らが「スーパーラジオ体操、超人な逆上がり」実演…「これをやるために生まれてきた」と語る“引退後の一大イベント”
posted2023/01/12 11:00
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
Kyodo News
内村航平(34)は鉄棒のバーを大きくしならせた後、伸身の新月面で美しい放物線を描いた。
最後はズドンという衝撃音とともに、その両足はマットに吸い込まれるようにしてピタリと着地が決まった。観客の拍手に包まれる中、着地の瞬間に時間が止まったように10秒以上も静止。暗闇の中、四方からスポットライトを浴びた「キング」の姿は美しく、絵画や彫刻作品を思わせた。現役時代の描写ではない。昨年1月に引退を表明した内村が主催した体操イベントでのワンシーンだ。
「体操をもっと身近に感じてほしいのと、これまで大切にしてきた美しい体操を見せたい思いがありました」
そのための演出として常々考えていたのが、絵画のように鑑賞してもらうことだった。Number1055号(2022年7月14日発売)『[レジェンド対談]内村航平×冨田洋之「“美しい体操”を語ろう」』でも、内村は自身の演技について「どの場面を写真に切り取られても『絵』として成り立っていることが大事」だと現役時代から意識していたと話している。
こうした思いを、イベントのタイトル「体操展~動く芸術~」に込めた。競技会とは異なり、点数や順位はつけない。単なるエキシビションではなく、「ラジオ体操」や「体操の進化の過程を伝える」というパートがあることも、事前の記者会見で明らかにしていた。
白井健三や村上茉愛らそうそうたるメンバーが
12月30日のイベント当日。会場は、内村が生まれた北九州市の総合体育館だった。2021年10月、現役最後の舞台となった世界選手権北九州大会の開催地でもある。1席4000円~2万円という決して安くはない料金設定にもかかわらず、会場には大勢の観客が訪れた。
共演者は名だたるメンバーが集まった。
男子は「ひねり王子」の白井健三と、日本伝統の「美しい体操」を体現する田中佑典。女子は「ゴムまり娘」こと村上茉愛、世界選手権で日本女子初の「エレガンス賞」を獲得した田中理恵に加え、抜群の表現力やバランス感覚を持ち、平均台で自身の名がついた技を持つ杉原愛子。現役選手は田中佑典のみだが、全員が強い個性を持ったオリンピアンで、内村いわく「第1回なので名のある精鋭を呼ばせてもらった」。
イベントの冒頭で、内村はまず見事な倒立姿勢を見せた。