酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
戦力外のち「ヤクルトレディさんと営業」、野球事業を起業…37歳スワローズ元ドラ1のビジネス・指導哲学「怒鳴ったりする方法論ではなく」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/07 11:03
加藤幹典は野球などスポーツの関連事業でセカンドキャリアを過ごしている
「日本全国47都道府県に、元プロ野球選手、社会人野球選手から正しい野球指導を受けることができる環境を作りたいです。今の少年野球は、ボランティアの指導者が中心です。正しい指導よりも主観で指導したり、感情で怒鳴ったりする。そういった方法論ではなく野球がうまくなること、怪我をしにくい体の動きを教えることが必要です。
今の少年野球では1日中練習したり、球を投げすぎるなども故障の大きな原因になっています。指導者も勉強しながら、子供たちの未来を考えていかなければいけないと思います」
僕の事業は少人数、マンツーマンで選手を指導しています
自身の事業の傍ら、東京インディペンデンツでも指導をしている。
「慶應義塾大学野球部の先輩である杉山剛太さんが育成メインのチームを作ると聞いて、僕の考えとマッチしていると思って、協力することにしました。いつの間にか監督になっちゃいましたが(笑)。僕の事業は少人数、マンツーマンで選手を指導しています。東京インディペンデンツはチームなので矛盾はありません。相談があれば、僕のところの選手に東京インディペンデンツを紹介することもあります。
ここでは体の使い方、怪我をしにくい体の動かし方などを中心に指導します。技術練習もしますが、それは“次の次”の話で、体幹、腹筋、股関節のトレーニングなどコアな部分の強化をして、選手の体力の底上げをしたいですね」
では、加藤のようにプロを目指すような選手の輩出は目指さないのだろうか?
「プロに行きたいとなれば、選手の目線の上げ方が問題になります。今のところ、そこまで達していない子が多いです。野球だけがすべてではないので、野球プラスアルファの部分で、いろいろと周りを見ながらやることで視野を広げてあげたいですね」
東京インディペンデンツでは、高校の野球部に進む選手のために「育成会」を作っている。加藤はこのグループの指導も担当している。
「根性も時と場合によっては必要ですね。高校が甲子園を目指したいという教育をしているのであれば、高校に行ってそれに耐えうる指導をしておかないと、ついていけなくて怪我をします。だから追い込んだ指導も必要になってきます。もちろん怒鳴るなどはしませんが、しっかりノックを受けさせるなど、ある程度強度を上げた練習もしています。言わば『予備校』みたいなものですかね」