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「私のような凡人監督は、虚勢を張らずに…」青学大・原晋監督がいま明かす“就任当初の反省”「食事中のAKB48やアニメの話題にも怒っていた」
text by
原晋Susumu Hara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/02 06:04
2015年の箱根駅伝で初優勝を飾り、選手たちから胴上げされる原晋監督
現役時代に、箱根駅伝やオリンピック出場という華やかな実績がなかったことでネガティブな気持ちがあり、焦りがあったのがその理由です。自分を強く見せないと選手がついてこないのでは、と必要以上に目線を上げていました。結果を優先して余裕がなかったのでしょう。当時の選手たちには悪いことをしたなと反省しています。
余裕がないと、部員の細かなところまで管理しようとしてしまいます。監督就任当時は、合宿の食事中にAKB48やアニメの話題が出ると、「なにをそんなつまらんこと話してんだ」と怒っていました。
今なら「今年は誰が総選挙で1位になってセンターをとるんだ? お前も今度のタイムトライアルで1位になってウチのセンターをとれ!」と言えます。
選手間のコミュニケーションは、彼らにとって大事なものです。それを頭から否定するのは、監督と部員との距離をわざわざ遠くするようなものです。そういう緊張関係にあると、部員は監督になにも相談できなくなってしまいます。
部下とお友達になる上司は、組織に必要ない
ただ、一方、監督が目線を下げたままでは選手は育ちません。
目線を下げるのは、選手にこちらの言いたいことを理解してもらうための第一段階。しかし、選手と一緒に盛り上がって楽しむのは、監督の仕事ではありません。そこから目標に到達できるよう選手を引き上げるには、やはり上から指導する必要があります。
最近、親が友達や兄弟のように子どもに接する姿を目にしますが、いつまでもそのままというのはおかしな話です。目線を下げることも大事ですが、多少厳しいことでも言うべきことはきちんと言うのが大人の務めです。指導者として目線を下げるのは、信頼感を与えるための手法です。
そこからやるべきことは、能力を伸ばしてチーム力を押し上げる案内人の仕事です。
部下とお友達になる上司は、組織に必要ありません。
《つづく》