ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「通勤電車に乗るのも初めてで…」プロ野球選手→不動産の営業マン、武藤祐太33歳が明かす“引退からの1年”「目標は現役時代より稼ぐこと」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byYuki Suenaga
posted2022/12/28 11:03
昨年、戦力外通告を受け、野球界を離れる決断をした武藤祐太。現在、不動産営業の仕事に打ち込む武藤に話を聞いた
最後のシーズン、武藤の身に起きていたこと
最終年の2021年は引退試合以外、一軍で投げることができなかった。
「じつは右肩も痛かったし、アキレス腱も痛めてコンディション的に苦しかったんです。ウェイトトレーニングやランニングの調整を変えるなど基本から見直したのですが、それでもコンディションは上がりませんでした。トレーナーさんにはすごい相談に乗ってもらい一生懸命やってもらったのですが、結果が出せずに本当に申し訳ないなって……」
残酷な言い方をすれば、もう潮時だったのかもしれない。救いは、武藤自身が割り切って現状を受け入れられたことだ。
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10月23日の横浜スタジアム、古巣の中日を相手に武藤の引退試合とセレモニーが開催された。9回表、武藤は中日時代、同学年で一番仲の良かった田島慎二の登場曲でマウンドに上がった。温かな拍手のなか、武藤は髙松渡からオールストレートで三振を奪い、現役生活に終止符をうった。
ハマスタで始まり、ハマスタで幕を閉じた武藤の野球人生
「緊張しましたけど、あんなノンプレッシャーで一軍のマウンドで投げたのは初めてでしたね。僕はプロ初登板(2011年6月29日)とプロ初先発(2014年9月16日)がハマスタだったので縁を感じます。本当、選手冥利に尽きるというか、ここまでがんばってきて良かったなって」
試合後のセレモニーでは、スポットライトを浴びながら、ファンに見守られ、家族とともにグラウンドを一周した。ハマスタにはDeNAで切磋琢磨した三上朋也、平田真吾、田中健二朗、伊藤光、中井大介ら同じ1989年生まれの仲間たちの登場曲がメドレーで流れていた。そしてスタンドには、飯能南高校時代の野球部監督であり“恩師”と慕う北能徳監督や、苦楽をともにした気心の知れた高校時代の同級生たちの姿もあった。
寂しさと幸せが、武藤を優しく包んでいた。