出社前のルーティン

「毎日、出社が9時半なんですけど、僕はギリギリに会社に着くのが苦手なんです。現役時代からそうで、早めに球場に入って、自分の時間を過ごしながら気持ちを作っていく。だから今は早めに出社してタイピングの練習をしています。部長に勧められたんです。ちょっと前までは指2本でポチポチやっていたんですけど、ようやく普通にキーボードを叩けるようになりましたよ」

　駆け出しの営業マンは、楽しげな表情を見せ、そう語った。

「家に帰るのは夜の10時ぐらいになりますし、大変なことも多いですけど、やっぱり家族がいますからね。この10月に同じグループ企業の㈱リアルという分譲住宅事業をやっている会社に異動したんです。さらに自分を変えていくには、もっとがむしゃらにやんないといけないなって」

仕事のやりがいは？

　果たして今の仕事のやりがいとは何だろうか。

「やはり家を建てるのは一生の買い物ですから、生半可な気持ちでは営業できません。僕は野球が好きだからつづけてこられたので、不動産や家のことをもっと好きになろうって。完成した現場を見て、夢を叶えた人がいるんだ、よし自分もがんばろうって思えるようになりました」

　サラリーマンとしての日々を懸命に過ごしているわけだが、振り返れば中日で7年、DeNAで4年、計11年過ごしたプロ野球の世界は、今どのように映っているのだろうか。

中日時代　©JIJI PRESS

「辞めてからプロ野球のすごさがわかったっていうんですかね。じつは今年、広島との開幕戦をハマスタに観に行ったんです。球場に入る前、ファンの方々が気づいてくれて、一緒に写真を撮ったりして、それはすごく嬉しかったですね。本当にファンってありがたい存在だなって改めて感謝したいです。で、球場に入ると、ああ広いな、こんなところで投げていたのかって率直に思ったんですよ。そして試合が進んで、中継ぎが出てきたら何かウルッと来たんですよね……」

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