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《猪木の願い虚しく》プロレスファンは知っている山田邦子の真実…M-1採点騒動で思い出す、35年前の新日・馳浩がキレた日 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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photograph byBUNGEISHUNJU / KYODO

posted2022/12/23 06:00

《猪木の願い虚しく》プロレスファンは知っている山田邦子の真実…M-1採点騒動で思い出す、35年前の新日・馳浩がキレた日<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU / KYODO

新審査員・山田邦子(左)の採点は「ブレ過ぎ」と批判の声も。この騒動は35年前の馳浩との“ある事件”を彷彿とさせる

 山田邦子は2014年になって、あの事件を雑誌『KAMINOGE』27号で語っている(聞き手は堀江ガンツ)。

山田 やたらそこだけがクローズアップされちゃって。あのとき、収録終わったあとにプロデューサーとかがみんな「大丈夫ですか?」って来たのよ。ちょっと売れてるタレントだったんで、特別扱いみたいになっちゃってて。それで単にインタビュー中にちょっと怒られただけなのが、「ゴールデンタイムに国民的なタレントが言葉の暴力に遭ってる図」になっちゃったわけ。

山田 そしたらテレ朝が「やめましょ、こんな番組やめましょ」みたいな感じなわけ。それで終わっちゃったの。

山田 「私はなんでもないですよ?」って言ったんだけど。「ダメだダメだ」「暴力だ暴力だ」みたいになって。

山田 私は耐えるも何も、なんでもなかったんだけど、テレビ局がそう判断しちゃったんですよね。

 バラエティ路線が数カ月で終わった理由が27年後のインタビューで明らかになったのだ。もちろん、低視聴率が続いて評判が悪いという総合的な理由もあっただろうが、あの事件も絡んでいたとは。

 ちなみに山田邦子は番組MCをやるにあたってアントニオ猪木から「プロレスをよく知らない人との橋渡しをしてください」「女の人とかも応援してくれるようになるといい」と言われたという。

多くのプロレスファンが反省

 ああ、クニちゃん……正直すまんかった……。

「事件」から数十年経って私を含む多くのプロレスファンは、このインタビューを読んで反省したのである。しかも驚くことに、山田邦子はプロレスを嫌うどころかプロレス会場にせっせと通う楽しさを語っていた。ずっとプロレスファンに誤解されていた人が、今は誰よりもプロレスファンだという事実。ああ……。

 そんなことをM-1初審査員で「叩かれる」山田邦子を見て私はまた思い出したのだ。オファーが来たから自分の仕事を粛々とやっていたのにまた……と。

 それにしてもあの頃のプロレスファンも今のM-1視聴者も「真面目」だ。私は毎年「みんなで漫才を真面目に見ている不思議さ」を感じてしまう。演者のネタが年々高度になり、見る側も批評的になる。

「おい、なに笑ってんだ。漫才やってるんだぞ。真面目に見ろ!」

「そんなとこで簡単に笑うな!」

「審査員ちゃんと審査しろ!」

 とでもいうように。

 漫才が、M-1が、いかに真剣勝負かという証でもあるし、番組側が「闘い」の構図を浸透させた成功例とも言える。だからM-1の巨大権威やうっとり感を内側からツッコんだウエストランドが大ウケしたのも当然だろう。「プロの悪口」はやはりいい。

 というわけでスポーツ新聞からの「山田邦子読み比べ」でした。

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