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61歳で死去・渡辺徹さんは将棋愛にあふれた人だった 「天国で好敵手の志村けんさんと…」かつて取材した田丸昇九段が悼む
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/12/20 11:00
朗らかな笑顔でお茶の間の人気者だった渡辺徹さん。将棋愛好家としても知られた(2015年撮影)
羽生善治九段、佐藤康光九段、森内俊之九段、島朗九段、森下卓九段、高橋和女流三段らの棋士と私的な交流が生まれ、たまに食事をした。
テレビの将棋番組、女流棋士イベントで司会を務めたこともあった。
写真は、2013年の名人戦第1局の前夜祭の光景。左から羽生三冠、森内名人、右から2人目は将棋連盟会長の谷川浩司九段。中央は祝辞を述べた渡辺さん。その話が面白いので紹介する。
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「私は将棋を指すとき、ヘボなりに真剣に考えますが、目の前の相手のことをそれほど考えるのは、日常生活でめったにありません。ある意味で、将棋は恋愛に似ていますね。森内さんと羽生さんは名人戦で3年連続で対戦し、1局ごとに2日間も相手のことを考えています。それは恋愛しているようなものですよ。もしかするとオフには、一緒にディズニーランドに行っているんじゃないですか(場内は大爆笑)。17年前にテレビ番組のペア将棋の企画で、当時《七冠》の羽生さんと《百貫》デブの私が組んだのですが、私がへまをして負けました」
伊武雅刀、吉田拓郎、志村けんとも対局を
渡辺さんは将棋の普及に貢献したとして、タレント・つるの剛士さんと一緒に、2014年に日本将棋連盟から「将棋親善大使」を委嘱された。
渡辺さんは同じ芸能人では、俳優の伊武雅刀さん、村上弘明さん、歌手の吉田拓郎さん、タレントの志村けんさんらと、将棋を指したという。
中でも好敵手は志村さん。番組で共演すると、挨拶もそこそこに楽屋で2、3局は指した。時には熱戦となり、出演者を30分も待たせたこともあった。また、志村さんが渡辺さんの自宅に近いスタジオに番組収録で来たときは、「将棋を指そう」とよく呼び出された。
志村さんは、番組スタッフに「みんな、将棋をやれ。将棋をやらないと、いいアイデアが浮かばないぞ」と言って、将棋を奨励したそうだ。
妻の榊原さんも将棋に理解があったという
渡辺さんの妻で女優の榊原郁恵さんは、将棋に理解があったという。
渡辺さんは「自宅で麻雀をジャラジャラやっていると、妻は《うるさいわね》という感じでした。でも将棋の本を持って盤に向かっていると、お茶をそっと出してくれたりするんです」と語った。
その郁恵さんがあるCMで将棋を指す場面があったとき、渡辺さんが手つきの演技指導をした。