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海外サッカーPRESSBACK NUMBER
W杯トロフィー「門外不出の製造過程」を特別に撮った…4代目女性社長いわく「情熱が工房の隅々にまで息づいています」
posted2022/12/18 17:00
text by
パオロ・ヴェッゾーリPaolo Vezzoli
photograph by
Paolo Vezzoli
黄金のワールドカップは、実は“2つ”用意されている。
12月18日、ルサイル・スタジアムで行われるアルゼンチン対フランスの決勝戦の後、世界王者となったキャプテンに手渡されるものはもちろん本物だが、この“オリジナル・トロフィー”は、お祭り騒ぎの表彰セレモニーの後すぐにFIFAへ返還されることになっている。
2つ目のワールドカップとは、表彰式の後、優勝国のサッカー協会に贈られるFIFA公認レプリカ・トロフィーのことだ。大会後に母国へ帰還した優勝メンバーや代表監督が飛行機のタラップや凱旋パレードで掲げているものは、まず間違いなくレプリカだと考えていい。
ただし、レプリカといっても世界にたった1つしかない超貴重なFIFA公認アイテム(?)。コピーだ模造品だというのは野暮の極みだろう。
高さ36.8センチメートル、重さ6175グラムの純金オリジナル・トロフィーを作っただけでなく、優勝国のみに与えられる公式レプリカ・トロフィー、そして出場国へ配られる大会記念メダルを製造するのが、ミラノ北部にある金属装飾加工の専門企業、GDEベルトーニ社だ。
世界で唯一、ベルトーニ社だけが知る「ワールドカップの作り方」。
地元在住のイタリア人フォトジャーナリストによる写真たっぷりの本邦初公開ルポ、必見です。<翻訳・構成/弓削高志>
CL優勝カップなども製造するイタリアのベルトーニ社
アッズーリ(=イタリア代表)が出場を逃したカタールW杯にも、イタリアは息づいている。
優勝チームが天高く掲げる「FIFAワールドカップ」は、純イタリア製だ。黄金のトロフィーは、ミラノ郊外の小さな街にある、ピンク色の壁で覆われた工場で生まれ、カタールの地へ渡った。
1900年代初頭に創業者エミリオ・ベルトーニが興したGDEベルトーニ社は、60年ローマ五輪でのメダル製造をきっかけにスポーツ分野の国際市場に本格進出。21世紀現在、優勝トロフィーやメダル、記念盾などのデザイン及び製造分野における世界的リーディング・カンパニーとして認知されている。
サッカー界だけに限ってみても、UEFAチャンピオンズリーグにUEFAヨーロッパリーグ、UEFAスーパーカップの優勝カップはいずれも彼らの手によるものだ。だが、サッカーと勝利の概念を魅力的かつ幻想的に表現するトロフィーは、やはりFIFAワールドカップのものが至高だ。
門外不出とされるW杯製造過程を追ってみよう
門外不出とされる製造過程を、順を追って見てみよう。