海外サッカーPRESSBACK NUMBER

W杯トロフィー「門外不出の製造過程」を特別に撮った…4代目女性社長いわく「情熱が工房の隅々にまで息づいています」 

text by

パオロ・ヴェッゾーリ

パオロ・ヴェッゾーリPaolo Vezzoli

PROFILE

photograph byPaolo Vezzoli

posted2022/12/18 17:00

W杯トロフィー「門外不出の製造過程」を特別に撮った…4代目女性社長いわく「情熱が工房の隅々にまで息づいています」<Number Web> photograph by Paolo Vezzoli

W杯トロフィーを製造している工場に潜入。写真で製造工程を追ってみた!

「ワールドカップの作り方」は、“荒削り”から始まる。真鍮で鋳造されたばかりのトロフィー本体から余分な金属片を電動リューターで削り落とす。

 1次切削が終われば、手作業のディテール彫刻作業。ノミと金槌による、昔ながらの職人技能だ。

 精密彫刻の後はブラッシングへ。徐々に目の細かいブラシで磨かれ、表面の平滑度と輝度が上げられていく。

 ブラシ研磨を終えたらトロフィーの表面は超音波洗浄で脱脂され、一度亜鉛メッキ加工される。

 再び超音波洗浄を受けたトロフィーは、最も重要な金メッキ加工過程に。

 金メッキ加工が終わり、トロフィーは蒸留水で細心の注意をもって洗浄される。乾燥後は精密彫刻用ルーペで入念なチェック。

 トロフィーの台座に鮮やかな緑の孔雀石プレートが埋め込まれ、輝度と表面の保護のためにエナメルクリアー塗料が塗布される。あとはひたすら艶を出すために手作業による磨き作業だ。

スポーツの“喜びと興奮”を表現するデザイン

 黄金のトロフィーに物質的な形を授けたのがベルトーニ社なら、命を吹き込んだのはミラノ出身の芸術家シルヴィオ・ガッザニガだ。

 1970年、メキシコW杯で3度目のW杯優勝を果たしたブラジルに“初代”ワールドカップトロフィーであるジュール・リメ杯の永久所持が認められると、FIFAは2代目トロフィーのデザインコンペを開催した。コンペに見事勝ったのが、デザインの国イタリアのベルトーニ社でアート・ディレクターと彫刻マスターの職にあったガッザニガだった。

 シンボリックに造形された2人の選手像が現世界そのものとサッカーボールを表す球体を天に掲げることで、スポーツの“喜びと興奮”を表現するデザインは、今や地球上で最も認知されているアイコンの1つといえるだろう。

 ガッザニガとベルトーニ社によって作られた純金のオリジナル・トロフィーは、72年1月に世界へ御披露目され、74年の西ドイツ大会以来、優勝国で4年間保管されるのが慣習となっていた。

【次ページ】 4代目の女性社長が語る“職人としての誇り”

BACK 1 2 3 NEXT
#シルヴィオ・ガッザニガ
#GDEベルトーニ社
#サッカーアルゼンチン代表
#サッカーフランス代表
#カタールW杯
#ワールドカップ

海外サッカーの前後の記事

ページトップ