サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER

サソリ、誘拐、遭難、遊牧民……。
「砂漠ランナー新年会」で情報収集! 

text by

松山貴史

松山貴史Takashi Matsuyama

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photograph byMiki Fukano

posted2011/02/04 06:00

サソリ、誘拐、遭難、遊牧民……。「砂漠ランナー新年会」で情報収集!<Number Web> photograph by Miki Fukano

 サハラマラソンへのエントリーは決定した。

 だが、あまり深く考えずにエントリーしてしまったので、とにかくレースに関する情報を持っていない。なんでもいいから情報が必要だったので、日本の事務局からもらったパンフレットやネットのサイトから、できうる限りの情報を集めてみた。

 距離やコースに関しては、公平を期するために直前まで発表されず、しかも毎年コースは変わるらしい。基本的には約250kmを1週間で走る。1日ごとの距離は決められており、3日で250kmを走破してしまう、という訳にはいかないらしい。

 例年、第1~3ステージは30km~40kmくらい。 第4ステージが最長で80km~85kmで、 第5ステージ42.2km、第6ステージが10km~20kmくらいである。だが総距離は年々増加傾向にあり、前回は第25回大会だったので250kmだったらしい。ということは第26回大会の今回は260km……。

 誰か「サハラマラソンは算数じゃない」と言ってやってくれ! ここの10kmは死活問題だぞ。

 そして一番気になるのは安全面だ。

 チェックポイントでは確実に水が手に入り、医師も待機しており、熱帯医療専門チームや“マメ潰し専用医師”もいる。選手は発煙筒を渡されるので、もしも遭難したときは、それを使用すればヘリコプターが助けに来てくれる。救助費用は約35000円也。これで命が助かると思えば安いものだ。もちろん発煙筒を使った瞬間、リタイヤになってしまうが。

 他には、「サソリに刺された」「現地の遊牧民に誘拐された」「行方不明になった人が遊牧民に保護されて何カ月か経って発見された」という例が過去にはあるらしい。参加費用が約50万円と他のマラソン大会などと比べて高額なのは安全性を守るためにはやむを得ないのかもしれない。大会期間中は定期的に砂漠をトラックやヘリが巡回し、道標用の石も砂漠一帯に多数ばら撒かれていると説明がある。

「遊牧民 ヘリコプター サソリ 熱帯医療」でグーグル検索!

 必須装備品には「精度の高い」コンパスや「強力な」消毒剤・消毒液など、ルーキーを怯えさせる殊更に誇張された形容詞を含んだ装備品や、「毒素抽出用スネークポンプ(!?)」等、どこに売っているのか分からないようなサバイバルギアが指定されている。これまでの実績を元に装備品が指定されているので、必須装備品さえ用意していれば「基本的に」レースでは大丈夫だそうだ。

 とにかく安全面には十分配慮されているようだな……。

 ここまでサラリと書いてみたが、ツッコミどころ満載である。熱帯医療専門チーム? ヘリコプター? サソリ? 遊牧民? 1日で80km……?? 日本で平和に生活している人々には関係のない単語ばかりだ。ちなみに「遊牧民 ヘリコプター サソリ 熱帯医療」でGoogle検索をかけてみると「米陸軍サバイバル全書」というのがトップで出た。

「世界で最も過酷なマラソン」は伊達ではなかったようだ。これは本気で練習しないといけない。

 ちなみに過酷なサハラマラソン、日本ではまだ知名度が低いが、ヨーロッパでは想像以上に人気が高い。フランスやイギリスではエントリーに“Waiting List”まで作成されており、一般人の参加は最低3年待たないといけないらしい。

【次ページ】 基礎体力向上のために、とりあえず毎日10km走る。

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