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「バトラーはなぜこんな戦い方なんだ?」“井上尚弥を最も苦しめた男”が感じた敗者への違和感、異例のノーガード戦法も「井上くん、スゴすぎ…」
posted2022/12/14 17:55
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph by
Naoki Fukuda
3年前に引退、いまは指導者としてボクシングと関わる田口は、歴史的な一戦となった井上のバトラー戦をどう見たのか。本人に聞いた。
「……ドネアになるのでしょうか」
2022年12月13日、21時46分、プロ生活24戦目でバンタム級主要4団体王座を統一した井上尚弥が記者会見場に姿を見せた。
司会者に気持ちを訊ねられると「ありがとうございました。久々に11ラウンド戦って、疲れましたね。攻めて攻めて攻めたので……。でも、ここにベルトが4本並んでいるのを見ると気持ちいいです」と応じた。
対戦相手の前WBO王者、ポール・バトラーについては、「予想通りでしたが、非常にタフでした。表情を変えずに戦っていましたね。その辺の心理戦も考えていました。勝因はジャブですね。それだけは、絶対に勝つぞと思ってやりました」と語り、「この階級でやり残したことは無いです」と結んだ。
質疑応答となった折、私は挙手して質した。
――以前、『これまでに戦った中で、一番強かった相手は田口良一さん(2013年8月25日に、井上は田口の持つ日本ライトフライ級王座に挑戦し、判定勝ちで勝利した)』と仰っていましたが、今、同じ質問をされたら、どう答えますか?
バンタム級統一チャンピオンは、爽やかな笑みを浮かべながら話した。
「誰になるんだろうな……戦ったなかで一番苦しんだ試合と言えば、ノニト・ドネアになるのでしょうか」
バトラー戦の白星を加え、井上尚弥の戦績は24戦全勝21KO。つまりノックアウトを逃した試合は3回のみ。初めて判定まで縺れたファイトがプロ第4戦の田口戦であり、目下、最後の判定勝利が2019年11月7日のノニト・ドネアとの19戦目だ。
6年強、井上尚弥にとって“最強の敵”として名前が挙がった田口良一に、今回のバトラー戦を振り返ってもらった。
「バトラーはなぜこんな戦い方なんだ…?」
「今回の印象ですか。井上くんが相変わらず凄いの一言です。どの部分でも井上くんが上回っていました」