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「昌磨のマジックを見せて!」世界王者・宇野昌磨を奮起させたランビエル・コーチの激励…300点超えに「スーパーエキサイティング」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/12/14 17:21
フィギュアGPファイナル、唯一の300点超で初優勝を飾った宇野昌磨
「何かを言われたからって、より気合が入ったわけではありません。ただ、僕は普段、日本で練習していますし、言葉も伝わらないので、僕の考えを全部伝えきれていないことで生まれた行き違いだと思いました。むしろ、たまにしかスイスにいかない僕を、そこまで真剣に見てくれているステファンに感謝する気持ちになったんです」
改めて、誤解を生んだ練習態度を思い返せば、スケート靴が原因である。しかし昨季の五輪と世界選手権を滑りぬいたスケート靴が、自分の足に合わないワケがなかった。スケート靴が悪いのではなく、合わないと思い込んでいる自分の思考の問題なのだ、と思うと納得がいった。
「NHK杯までは、スケート靴がしっくり来ていないと思いながら練習していて、『靴が合わないのにこの練習に何の意味があるだろう』という気持ちがありました。NHK杯後、『この靴でやっていこう、やっていける』と確信してからは、去年のように『毎日成長していく練習』に変わり、自分が思い描いていた練習ができるようになったんです」
今季最高といえる仕上がり
気持ちが定まると、NHK杯後は名古屋で2週間ほど自主練習。12月1日にスイスの拠点に移動する頃には、今季最高といえる状態に仕上がっていた。
「自分が納得した上でスケートをしている、という考えが固かったことが、短期間で戻せた要因かなって思います」
スイス入りした宇野を見て、ランビエルコーチも目を細めた。
「昌磨は挑戦心に満ちていました。世界選手権王者になったからといって、昌磨は何も変わっていないのです。氷上では、1つの練習が身につくと、すぐに『次は何?』と次の段階を求めてきます。それが成長に繋がっているのは明らかでした。昌磨の前進が速いので、僕のほうがキャッチアップしなければならないくらいでした」
トリノの公式練習でも、すべての4回転が絶好調。試合に向けて、宇野はこう考えた。