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山本草太は演技中、何度も右拳を握りしめた 再出発の“1回転”からGPファイナル銀までの軌跡「1つ1つを乗り越えたうれしさが出てしまった」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/12/14 11:00

山本草太は演技中、何度も右拳を握りしめた 再出発の“1回転”からGPファイナル銀までの軌跡「1つ1つを乗り越えたうれしさが出てしまった」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

シニアとして初の出場となったグランプリファイナルで儀メダルを獲得した山本草太。演技中、右拳を何度も握りしめた本人に去来していた思いとは

「今シーズン、なかなかフリーでいい演技ができていなくて、今回の試合で、練習してきたことがやっと出せたのがすごくうれしかったです。結果も表彰台を1つの目標にしていたので、すごくうれしく思います」

 何度も握りしめた右拳については、こう語った。

「1つ1つのジャンプがすごく大事になってくるので、1つ1つを乗り越えたうれしさが演技中に出てしまったかなと思います」

 1つ1つを乗り越えた手応えを感じるように強く握りしめたその右拳は、この日のジャンプにとどまらず、山本のこれまでの歩みが結実したことを象徴しているようだった。

7年前に語っていた「北京五輪で金メダル」という夢

 山本は、早くからフィギュアスケートの世界では注目を集める存在だった。

 中学3年生だった2014-2015シーズン、ジュニアグランプリファイナルで銀メダル、世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得。その翌シーズンの大会では早くも4回転トウループを成功させた。スケーティングの上手さもあり将来を嘱望されていた。

 高校1年生のとき、抱負をこう語っている。

「オリンピックで金メダルを獲りたい。それがスケートを始めたきっかけでもあり、夢でもあります。2018年の平昌は、まずは出場することが目標です。そして2022年の北京五輪で夢をかなえるつもりです」

 大会で残す成績、演技にうかがえるポテンシャルからすれば、それは決して大仰な夢ではなかった。

 だが、その高校1年のシーズンの終盤にアクシデントが襲った。2016年3月、トリプルアクセルの練習で右足首を骨折したのである。

初めて心が折れた「ケガの連続」と「長期休養」

 5月になって一度は氷上に復帰したが、7月、10月と2度にわたり右足内側のくるぶしを疲労骨折。長期休養をよぎなくされた。

「初めて心が折れたというか。歩くのも痛くて松葉杖の生活だったので、大学に進学しないで就職を、とかいろいろ考えていました」

【次ページ】 「まだ成長できるかな」「この先あるのかな」

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