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「森友哉のすごさは一番わかっている」オリックス若月健矢(27歳)が語る“10年越しの正捕手争い”〈FA移籍の寅威さんからエールも〉
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2022/12/13 17:02
日本一に貢献した若月健矢。切磋琢磨してきた伏見が移籍したが、来季から同学年の森友哉というライバルが加入する
若月は、2年連続で投手4冠と沢村賞を獲得したエース山本の相棒を務め、2年続けて最優秀バッテリー賞を受賞した。チームの得点がリーグ4位と振るわない中、若手の多い投手陣を伏見とともにリードし、リーグ連覇と日本一を実現した貢献度は計り知れない。
それでも、常に競争の中に身を置かなければならないのがプロ選手の宿命。若月とて、もちろん譲るつもりはない。
「(森は)バッティングも守備も本当に素晴らしい選手。同学年なので昔からそれは一番わかっています。でもそこで譲っていたらダメだと思うので、なんとか食らいついて、1試合でも多く出たい。
正直どんな役割でもいいです。チームにとって必要な場所、求められているところなら、それがどんな場面でも僕はいいと思っています。でもやっぱりスタメンで出たいし、そう思わなくなってしまったら終わりだと思う。35、6歳ぐらいのベテランになったらちょっと立場は変わってくるかもしれないですけど、僕は今27歳で、一番いい時かもしれないんで(笑)。そこで諦めてしまったら、もったいないですから」
森に負けない若月の武器とは?
同じ年にプロ入りし、森はトップスピードで先を走ったが、若月も、一歩一歩戦える武器を身につけてきた。強肩が持ち味で、2019年にリーグトップの盗塁阻止率.371を記録。今年は.442という高い数字を残した。ブロッキングも年々安定感を増している。日本シリーズ第4戦の5回1死三塁で宇田川優希がマウンドに上がった時、強く叩きつけられたフォークを何度も体を張って止めていた姿は強く記憶に残った。何より、これまで築いた投手陣との信頼と経験がある。
長年課題と言われてきた打撃も今年は成長。シーズン中の中嶋聡監督のアドバイスが効いた。
「頻繁にアドバイスをもらっていたんですけど、一番は『背筋を使いすぎるな、伸び上がるな。背中を丸めるイメージでバットを通してあげろ』というのが印象的で、感触も良くなりました」
規定打席には達していないもののキャリアハイの打率.281を記録し、特に左投手に対しては.412の高打率。また得点圏打率は.371と、勝負強さが光った。その自信が、来年のポジション争いへの活力となる。
「バッティングでは、特に相手が左ピッチャーの時にチャンスもあると思いますし、自信もついてきました。守備に関してはやっぱり、全体で負けたくない。そこしかない、ぐらいに思っていきますよ」