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「もちろん年俸だって気になる」注目の巨人左腕・井上温大(21歳)は、“同級生ライバル”佐々木朗希&宮城大弥にも対抗心を隠さない
posted2022/12/13 06:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Kiichi Matsumoto
右のバッターボックスにはスワローズではなく侍ジャパンのユニフォームを着た塩見泰隆がいた。11月6日、WBCへ向けての強化試合を行う日本代表と戦ったジャイアンツは、プロ3年目を終えた背番号97、サウスポーの井上温大を先発のマウンドへ送り出した。
井上は最速150kmのストレートを内外角へ投げ分け、3回を1安打、無失点に抑えて、4つの三振を奪う。とりわけ目を引いたのはキレのあるストレートだ。この日に投げた49球のうち、39球がストレート。塩見を空振り三振に取った3回の打席は、5球すべてがストレートだった。
「あの(塩見を三振させた)高めのストレートはよかったと思います。その1球前、インコースへいいストレートが行ったのに、それがファウルになった。で、もう1球、インコースを要求されて、そのストレートは真ん中高めに行ったのに空振りさせることができました。絶対に抑えてやるという強い気持ちがあったからこそ、甘いコースでもいい結果につながったのかなと思います」
同級生ライバル、宮城大弥と佐々木朗希にも対抗心むき出し
ナイスピッチングの理由に気持ちを挙げた井上だが、もちろん技術的な裏づけもある。今の井上が意識するポイントは2つ――足を上げたときの立ち姿が頭から踵まで一直線になっていること、前に突っ込まないようにゆっくり過ぎるくらいの体重移動をすること。身体の部位のどこをどう使えばインコースへ行くのかをブルペンで覚え込ませてきた。
「ストレートについてはファウルが取れるようになってきたので、そこは自信にしていきたいと思っていますが、頼れる変化球がスライダーしかない。下に落とすか、逆方向へ逃げていくボールがあれば、2、3巡目も抑えられるのかなと思います」
この秋、井上が取り組んできたのがチェンジアップだ。井上はその難しさについて、こう話す。
「僕はストレートを投げるとき、左のヒジが前へ出てきます。その意識のままでチェンジアップを投げると、どうしても高めに浮いてしまう。そこが難しいところです」
今年、プロ初勝利を挙げた21歳はすでに侍ジャパンのユニフォームを着る同級生、宮城大弥と佐々木朗希への対抗心を隠そうとしなかった。「テレビに出ていたら見ますし、もちろん年俸だって気になりますよ」