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脳梗塞で感じた「大切なのは『命、健康。以上』」大橋未歩(44歳)が今明かすテレ東退社と「フリーアナウンサーになった理由」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKeiji Ishikawa
posted2022/12/10 11:02
34歳で発症した脳梗塞を経て、価値観が変わったという大橋未歩
「自分は性格的にフリーランスが合っていた」
競技から退く日がそう遠くない時期にあるアスリートたちから聞いた不安を連想した。いわく、競技を離れることですべてが失われる気がする、違う道に進むと今までのことをいかせない気がする……。
大橋はこう語る。
「自分自身もアナウンサーであったり、テレビ局であったり、競争の中にいたと思うんですけれども、競争の中にいるとその範囲の中でいかに向上していくかということに自分の視野のすべてを奪われがちです。でも世界に目を向けてみると、競争できるという環境自体がとても恵まれていることであって、例えば食べ物に困っているとか、戦争が行われているとか、今この瞬間にも命がさらされるようなことが起こっているわけですよね。
そういうところまで目を広げていくと、自分が得てきた知見というものをどういう風に生かせばいいか、導きがある気がするんですよね。私が言える立場ではないですが、アスリートの方々も、血の滲むような努力をされている過程で、勝ち負けやメダルの色でははかれない貴重な経験が絶対あるはずだと思うんですね。それを社会にどう還元していくかと考えると、何か答えが出る気が私はしています」
そしてこう語る。
「自分自身は性格的にフリーランスが合っていたんだなと思います」
その理由を「自分の言葉に対して責任を持ちたいと思っていて、最終的にその責任を取る覚悟があるという状態で放送に出ることになる」からだと言う。
言葉への真摯な姿勢は、昨今の社会問題を想起させた。誹謗中傷である。それは大橋もまた、さらされていたことだった。【つづく】
(撮影=石川啓次)
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