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1071日ぶりの優勝…石川遼が“30代初栄冠”を「手放しで喜べない」理由とは?「もっと自分を磨ける、まだまだデコボコだな……と思う」
posted2022/11/16 17:02
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
KYODO
そういえば、試合前のトピックスと言えば、ヘアスタイルくらいなものだった。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るった2020年9月。日本の男子ツアーが約8カ月の中断を経て再開した試合に、石川遼は襟足を少し伸ばして登場した。
2年ですっかり長髪が定着。ゴムひもでひとつに束ねて臨んだ試合も多かった。ただ伸ばしっぱなしにしていたのではなく、その間もバランスを整えてはいたという。それが今回はどうにも、鏡の前で美容師と相談しながらハサミを入れていくうちに、「もうちょっと切ろう」が重なって……。長いあいだ、日焼けしていなかった首の後ろだけが妙に白かった。
散髪は直前の日曜日だった。「たまたまオフでして」。その週のマイナビABCチャンピオンシップは予選落ちし、週末の仕事がなくなった。「予選を通っていれば、たぶん切れていなかった」。直近5試合で4日間を戦ったのは1回だけ。最近のゴルフの状態と、新しいヘアスタイルに“切っても切れない”関係があったのも事実だった。
「ゴルフもこれくらい、スッキリすればいいんですけど……」
願いは通じたのだろうか。
ちょうど1週間後の午後。石川は黒いニットの上に赤いチャンピオンブレザーをまとった。
プレーオフを制して3年ぶりの優勝
静岡・御殿場での最終日の大混戦を勝ち抜き、プレーオフ2ホール目で星野陸也を破った。寒々しくなった首元に11月の雨を浴びて、約3年ぶりの勝利の味をかみ締めた。
三井住友VISA太平洋マスターズでは過去に2勝したとはいえ、それは2010年、12年と直近でも10年前のことだった(ちなみにどちらの大会でも、石川の髪はそこそこ長かった)。その後PGAツアーに挑戦した期間を経て、コースは19年大会の前にリニューアル。18ホールで72だったパー設定は70に変わり、レイアウトのマイナーチェンジで難度が上がった。