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1071日ぶりの優勝…石川遼が“30代初栄冠”を「手放しで喜べない」理由とは?「もっと自分を磨ける、まだまだデコボコだな……と思う」 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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posted2022/11/16 17:02

1071日ぶりの優勝…石川遼が“30代初栄冠”を「手放しで喜べない」理由とは?「もっと自分を磨ける、まだまだデコボコだな……と思う」<Number Web> photograph by KYODO

三井住友VISA太平洋マスターズ最終日、プレーオフを制してツアー通算18勝目を挙げた石川遼(31歳)。3年ぶりのウイニングパットを沈めて空を見上げた

 改造初年度に予選落ち。決勝ラウンドに進んだ次の20年も優勝争いには加われず、14位に終わっていた。「『こんなに難しかったっけな……』と。自分のイメージが追いついていなかった」。大好きなコースにそびえる壁は途端に高くなった。

 以前の18ホール、フィールドスコアの出方とのギャップにも悩まされていたのも確かだが、とくにここ2年は新しいスイングづくり、コースマネジメントづくりに傾倒した時期だった。もちろん、現在進行形である。

 コロナ禍が本格的に始まった2020年春、石川は新しいコーチに師事しキャリアで一番とも言えるようなスイングチェンジに取り組んだ。バックスイング、トップの位置を低くしてインパクトゾーンを長く、安定したものにする動き。クラブを上げる際の右肘部分の形、ポジションが特徴的で、テンポもゆっくりしたものになった。

 ショットの再現性、中でもロングゲームでの安定感を高めることが狙い。動きの大幅な変化は相応の代償を伴い、最初のうちは球の行方が定まらず、とりわけ飛距離はドライバーで30ヤード以上落ちた。時間をかけて新しいスイングでゲームメークし、その間に台頭してきた若手選手と、戦える手応えが芽生えてきたのは最近のこと。世界ランキングは今年の夏場、プロ初勝利を挙げた直前、2008年10月以降ワーストの370位まで後退していた。

3年前の優勝とは心境が違う?

 2007年にアマチュアとしてツアーで優勝、31歳にしてプロゴルファーとして15年のキャリアを誇る石川が、3年近くタイトルから遠ざかったのは今回が2回目だった。

 2019年7月に日本プロゴルフ選手権を制した時、前回の優勝(2016年RIZAP KBCオーガスタ)からは1043日が経過していた。2017年秋に出場権を失ったPGAツアーから撤退、国内ツアーに復帰してから初めて勝ったカムバックの1勝だった。

 空白時間の長さは近しいようで、石川は当時の心境とのはっきりとした違いを口にした。

「3年ぶりに勝った日本プロの時は、本当に先が見えなくて。目の前のことにいっぱい、いっぱい。祈りながら“マン振り”していた感じだった。ドライバーも絶好調。パッティングも、アイアンも良かった。すべてがハマった」

 期間中の悪天候の影響で最終日に決勝36ホールをこなし、プレーオフも1ホール戦って決着させた一戦は無我夢中でしかなかった。

【次ページ】 “大混戦”を制することができた理由とは?

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