フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
24歳のベテラン・宇野昌磨がたどり着いた「境地」とは? 圧巻演技の後に明かした“アスリートの道”「先に表現を…は自己満足なので」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/11/17 17:01
優勝を果たしたスケートカナダでの宇野昌磨の演技
「勝負事が好き」試行錯誤してたどり着いた境地
だが今の宇野にとって、フィギュアスケートは芸術のように自分を表現する手段ではなく、あくまで競技スポーツであることを再び強調した。
「スケートを楽しくとか、そうやって考えた時期もありましたけれど、やっぱりそれで成績が落ちると、やっぱり上を目指したいって僕は思っちゃうので」
試行錯誤してたどり着いた境地である。コーチ無しで挑んだ2019年秋にはかつてないほど調子を崩し、GP大会2試合ともメダルを逃したこともあった。そのシーズン半ばからステファン・ランビエルコーチの元に身を寄せ、調整し直して這い上がった。
「自分のスケートを追求する道と、スポーツ選手として追求する道っていうのは、僕はどっちかというと多分、勝負事が好きなので、スポーツ選手としての道を選ぶかなって思います」
宇野が語る「スケートが楽しい瞬間」
だが勝利を手にすれば楽しいのか、というとそうではない。宇野は自分よりもうまいと思う選手を見ると楽しいのだという。その鍵となるのは、やはりジャンプの技術だ。
「僕より表現がうまい選手はたくさんいます。でも仮にめちゃめちゃ表現がうまくて10点満点もらえる選手だとしても、トリプルジャンプしか跳べなかったら、やっぱり上位に来れない。上位に来れなかったら、僕も、刺激を受けるかと言われたらそうではないと思うんです。結果から言うと、僕よりジャンプのスキルがすごいなって思う選手がいると、それを目標に練習したいと思います」
ジャパンオープンではアメリカの新人、イリア・マリニンのジャンプに、大きな刺激を受けたと語った宇野。GPファイナルに進出すれば、恐らく再びマリニンと顔を合わせることになるだろう。今シーズン、宇野がどのような成長を遂げていくのか楽しみだ。
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