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《日本ハム新球場》「3m足りない」大失態はなぜ起きたのか?「アメリカでは珍しくないから」で済まされないルール破りの問題点
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/11/12 17:00
「BIGBOSS」を卒業し、心機一転「新庄監督」として監督2年目のシーズンにのぞむ
新庄監督は「オレが子供だったら、近くで見たい」
エスコンは「60フィートルール」を知らなかったのは間違いない。なぜなら工事が7割進んだ3月21日に、エスコンは報道陣向けに内覧会を開き、自ら「国内では最も近い球場」と、50フィートを鼻高々で説明しているからだ。つまり、意図的に破ったのではないのはこの内覧会で証明されているが、悪意がないから許されるという論理は、理解に苦しむ。そもそも悪意がないのは当たり前であって、意図的に破ったのならそれこそ大問題ではないか。
実行委員会の出席者に事情を確かめたが、議論の中ではMLBの規則も披露されたそうだ。当該規則の原文には「recommended」とある。意味は「望ましい」。つまり日本の文言とは明らかにニュアンスが違い、そこがスポーツニッポンの記事の根拠にもなっているのだろうが、日本国内の球場が日本の野球規則以外の何に従うというのだ。仮に「60フィートルール」は知っていたが、現状にそぐわないと考えたのなら、設計段階でこう主張すべきである。
「大リーグでは60フィートは義務ではありません。ファンに今以上の臨場感を味わってもらうためにも、文言の一部を変更しませんか? 皆さんのご理解、ご賛同が得られれば、わが日本ハムが先駆けとなって50フィートの新球場を建設します」
また発覚2日後の9日には、新庄剛志監督が言及した。スポーツ報知の記事によると「ファンの方たちから一番喜ばれる、そういう気持ちで造った球場っていうのは分かってほしいなと。オレが子供だったら、近くで見たい」と理解を求めたそうだ。
建築にはさまざまな規制、法律がある。建築基準法はもちろん、自治体の条例や建蔽率、容積率。仮に周囲の日照権などを一切侵害しないが、10フィートだけルールから逸脱した建物を建てたとする。「誰にも害はない」「悪気もない」「何よりもかっこいい。僕がその家の子供ならこんな家に住みたいもん。しかもアメリカじゃこんなこと、珍しくないんでしょ? だからよくない?」。周囲はみんなルールを守っていることを忘れてはいないだろうか。