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ヤクルト戦力外ドラ1「僕の中では最後やと」名リリーフは妻子が見守る中…トライアウト現地で記者が聞いた“世に出てない話” 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/11/10 11:00

ヤクルト戦力外ドラ1「僕の中では最後やと」名リリーフは妻子が見守る中…トライアウト現地で記者が聞いた“世に出てない話”<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

トライアウト終了後、スタジアムに向かって挨拶する選手たち

 広島のユニフォーム姿だが、楽天在籍経験があり、当時は先発投手だった。制球に難があったものの2014、15年と4勝している。シート打撃は3人と対戦するが、打者はいずれも早打ちだったために、わずか6球で菊池は降板した。ネット裏のスカウトは、菊池の実力を確かめられたのだろうか。

“村上、安田らとクリーンアップを組んだ男”が

 菊池の3人目の打者として打席に立ったのが、楽天の岩見政暉(雅紀)。慶應義塾大学時代には東京六大学歴代3位となる21本塁打を打ったスラッガーである。彼がルーキーだった2018年オフ、台湾での「アジアウィンターリーグ」ではヤクルト村上宗隆、ロッテ安田尚憲とともにクリーンナップを組み、大活躍。台湾のスポーツ紙に大きく取り上げられていた。

 しかし公式戦では振るわず、通算1本塁打。今年の春季キャンプでゴメスこと後藤武敏コーチの熱烈な指導を受けていた。背番号が小さく見える大きな体ながら、岩見は覇気を迸らせることはなく、熱血漢の後藤コーチがもどかしそうだった印象が残っている。トライアウト後、岩見は「後藤さんには間のとり方から何から何まで教えていただいた。結果が出せなかったのは残念ですが、本当に感謝しています」と語った。

巨人の「背番号209」打撃投手、カープの安部も

 7人目の投手として出てきたのは巨人の背番号「209」の左腕・小石博孝である。

 彼は現役ではなく打撃投手だ。左腕を折りたたんだ独特のフォームで3人を12球で打ち取った。ただ球速は130km/h台だった。

 小石が相対した2人目の打者が広島の背番号6、安部友裕である。2007年の高校ドラ1で、2017年には打率.310(4位)をマークしたシュアな左打者だ。広島は若手打者の台頭が続き、出場機会が減っていた。33歳だが、精悍な表情だ。

「今日は純粋に野球を楽しむことができた。もともとはトライアウトを受ける予定はなかったが、動けるならいろんな人に見てもらって、結果は別にしてこういう選手だと言うことを見てもらいたかった」

 安部はこのように語った。大人のコメントだと感じた。

独立Lを経由した秋吉を見つめる妻子の姿が

 9人目の投手は秋吉亮である。

 筆者は2年連続最多登板を記録したヤクルト、そして日本ハム時代ともに見た。そしてノンテンダーFAになって今年、日本海オセアンリーグの福井に移籍し、リーグ戦で始球式をしたのも見た。

【次ページ】 履正社→ヤクルトドラ1の寺島、井納が語ったこと

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