屋鋪さんをアシスタントとして支え、この野球教室を運営しているNPO法人「れっど★しゃっふる」事務局長を務める村上広幸さんにも話を聞いた。同法人は子供たちが様々なスポーツに触れあえるように立ち上げたもの。しかし村上さんは野球経験がなく、知人を介して出会ったのが屋鋪さんだったという。

「単発のイベントで野球教室を開催することになり、屋鋪さんにご協力いただきました。それ以降、場所が変わるなどありながらも野球教室を実施しているのですが、その辺りは屋鋪さんのご協力もあって10年以上続けていける部分なのだと実感します。

　屋鋪さんの指導を見て凄いなと思っているのが、こういった環境の中でも1人1人に対する指導をカスタマイズしている点です。始めたての子に対しては基本的な動作をしっかりと教えると同時に、上手い子に対しては“難しいレベル”を極限まで上げていこうとするんです」

©Satoshi Shigeno

「本当に研究したか？」「よーし、ナイス！」

　村上さんと会話しながら、始まった打撃練習を見ていて納得した。ただ楽しくボールに触れ合うのではなく、想像以上に“ガチ”の教室だったからだ。

　トスバッティングが始まると、屋鋪さんの表情からは笑みが消え、それぞれの選手のポイントを見極めようと鋭い視線を送る。

　それぞれのレベルに合わせつつ打撃のポイントを指摘し、さらに友達とみられる2人組のうちの1人に対しては「○○くんは打球上がるようになってるぞ？ キミはどうだ？ お父さんに撮ってもらった動画を見て本当に研究したか？」と、競争意識に火をつけるような言葉も口にしている。

　その一方でラインドライブがかかったヒット性の当たりには「よーし、ナイス！」と乗せるような言葉で、子供達の集中力を途切れさせることはない。

子供たちに考えさせよう、という指導

　もともと、言葉で伝える意欲にあふれる人である。前編で取り上げたSL本について聞いた時、このような話もしていた。

「SLだけではなく、私の名前で野球の実用書も発行しました。実はその時の文章は私が全部書いたんです。写真を説明するキャプション、というものがありますよね？ それも1つずつ書いていったんですよ」

　自らの表現で、自分の培ってきた技術を伝えようとする意欲は、人一倍なのである。

　屋鋪さんの熱量がさらに増したのは、守備練習だった。

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