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日本人王者対決は激闘に…2団体統一・寺地拳四朗の名参謀が語った勝因とは?「京口選手の怖いところは…」「あの回は助かりました」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2022/11/03 11:02
11月1日に行われたWBC王者・寺地拳四朗(右)とWBAスーパー王者・京口紘人によるライトフライ級2団体統一戦。手に汗握る激闘を制したのは寺地だった
しかし6回、京口は出てこなかった。ここは勝負の行方を占う一つのポイントになった。
「5回が終わって拳四朗に言いました。ラッシュするのはいい、でも相手の動きをちゃんと見ないとダメだと。6回、向こうは来るのかなと思ったんです。でも逆に休ませた。あれは助かりました。拳四朗は体力を回復できたし、相手を観察する感覚を取り戻せた。だから7回、京口選手が出てきたとき、しっかり相手を見て対処することができました」
京口は5回に喫したダウン、そのあとの猛反撃を「記憶にない」というから、6回はとても勝負をかけられる状態ではなかったのかもしれない。試合は7回、ここで勝負をかけてきた京口を寺地がワンツーで沈め、フィナーレを迎えた。
井岡と八重樫のように統一戦から飛躍できるか
2012年のミニマム級2団体統一戦、WBC王者の井岡一翔とWBA王者の八重樫東以来となる日本人同士の統一戦はこうして終わった。寺地陣営のよく練られたプランと周到な準備が、ピンチを乗り越えての勝利につながったと言えるだろう。
寺地は試合後、同じリングでWBO同級王座を防衛したジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)との3団体統一戦を希望した。京口の勝利を予想していたゴンサレスが寺地のパフォーマンスを見てどう感じたのかは気になるところ。一方でイギリスの大手プロモーター、マッチルーム・ボクシングと契約する京口を下したことで、海外進出の目も出てくるかもしれない。
京口にとってはプロで初めての黒星となった。試合後の記者会見で、「現時点で次がんばりますとは言えない」と率直な心境を明かしたように、今は現実を受け入れるのに精一杯だろう。2016年のプロデビュー以来、2階級制覇、海外進出と休みなく走り続けてきたのだ。まずは十分な休養を取って心身ともにリフレッシュしてほしい。
10年前に激闘を繰り広げた両雄は、この試合を境に大きく飛躍した。勝った井岡は日本人男子選手初の世界4階級制覇を達成し、いまだ世界チャンピオンに君臨している。負けた八重樫も“激闘王”の異名を不動のものとし、3階級制覇を成し遂げた。寺地と京口の今後にも大いに期待したいと思わせる統一戦だった。
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