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番記者が選ぶ「打者・大谷翔平」の今季ベストゲームとは? ジャッジとの“MVP対決”で放った30号に「野球少年に戻ったような…」
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2022/10/29 11:02
現地時間8月31日のヤンキース戦、ゲリット・コールから30号3ランを放った大谷翔平。アーロン・ジャッジとの“MVP対決”にファンは酔いしれた
コールからの完璧な一発に、大谷が吠えた
1勝1敗で迎えた第3戦。スタジアムは4万3555人を飲み込んだ。チケットは完売。ファンのMVPコールは、二分されていた。大谷と、ジャッジが打席に入ると、お互いのファンが競うように声を張り上げた。
ヤンキースの先発は、エースのゲリット・コール。大谷にとっては、試合前まで17打数3安打と抑えられていた天敵だった。
だが、この日ばかりは、そんなデータはあまり関係なかったのかもしれない。アドレナリンが出た背番号17の集中力は研ぎ澄まされていた。
1回の第1打席は、中堅の好捕に阻まれたが、あとわずかで本塁打という大飛球。
「最初の打席も惜しかった。チャンスがきたら、もう一度打ちたいなと思った」
2点ビハインドの6回。1死から、相手内野手のエラーが重なった。これが、ドラマを生む演出になった。主役のもとに、一・二塁と好機が訪れた。
2ボール。インハイと低めに厳しい攻めをされた後の打撃カウントで、コールが投じた98マイル(約158km)の速球が甘く入った。
「積極的にいこう」。そう決めていた大谷の迷いのない鋭いスイング。完璧に捉えた打球は、中堅方向に一直線に飛んでいった。
コールは打たれた瞬間、ボールの行方を見ずに右手でグラブをバンとたたいた。
一方の大谷は打球の行方を見守りながら、確信する。一塁ベース付近で拳を力強く握り、吠えた。
日本選手初の2年連続30号の大台となる一発は、逆転の決勝3ラン。エンゼルスファンの絶叫と、ヤンキースファンのため息が交錯した。押され気味だったエンゼルスファンの「MVPコール」は、一層、力強さを増した。