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「朝倉未来と私のレベルはちょっと違う」RIZIN新王者クレベル・コイケが継承した“猪木イズム”とは〈Bellator王者と年末決戦〉
posted2022/10/28 17:02
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
「10月16日は自分の誕生日。このチャンピオンベルトは自分へのプレゼントです。1、2、3、ポペガー!」
試合後、マイクを握った33歳の新チャンピオンは最後にいつもの決まり文句を叫んだ。「ポペガー」とはポルトガル語で「極めるぞ」を指す。それは、所属するボンサイ柔術が一本勝ちにこだわるポリシーとも重なり合う。
王者をタップさせた完璧な三角絞め
4年半ぶりに福岡で開催された『RIZIN.39』(10月23日・マリンメッセ福岡)で、牛久絢太郎が保持するRIZINフェザー級王座に挑んだクレベル・コイケは、2R1分29秒、三角絞めで王者をタップさせた。
その入り方は絶妙だった。自ら首投げを仕掛け、崩れたところで三角絞めをセットアップしており、最後は牛久の頭を自分の方に傾かせることで極めきった。技の仕掛けを気づかせないで極める。ブラジリアン柔術の奥義を久しぶりに目の当たりにした気分だ。
大会前、「三角絞めで極める」と宣言していた通りのフィニッシュに、クレベルは「めっちゃうれしい」と相好を崩した。
「ちょうど1年前からこの日を待っていたので」
大会直前には「牛久が王座防衛を果たすのでは?」という機運も高まっていたが、クレベルの技巧の前に完敗を喫した格好だ。このあたりのシチュエーションは那須川天心vs.武尊のときと酷似するが、いずれにせよこの日系ブラジリアンは、イメージ通りの王座奪取を果たしたことになる。
「私、いっぱい三角絞めを練習した。牛久はエスケープやディフェンスを練習していたと言っていたけど、極まったら無理」
アントニオ猪木を「めっちゃリスペクトしています」
昨年6月13日に東京ドームで開催された『RIZIN.28』で、クレベルは当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった朝倉未来と対戦。コーナーポスト付近で“伝家の宝刀”三角絞めを極めて朝倉を失神させ、逆転勝利をあげた。その時点でのRIZINフェザー級王者は斎藤裕だったので、次期挑戦者はクレベルになると誰もが想像した。
しかし、クレベルは「体重が落ちない」ことを理由に斎藤との対戦に難色を示し、他団体への転出も示唆した。一時はRIZINからの離脱も避けられない流れだったが、代理人ではなくクレベル本人と直接交渉することで、態度は軟化。今年2月の佐々木憂流迦戦から、再びRIZINを舞台に闘うようになった。