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ゆるキャラ25体が国立競技場でリレー競走!「コロナ禍で活躍の場がない…」ゆるキャラたちが参戦した“絶対負けられない戦い”
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byHirofumi Kamaya
posted2022/10/30 17:00
ゆるキャラによるリレーの様子。参戦したゆるキャラたちに話を聞くと、皆一様に苦況とこのリレーにかける思いが口をつくのだった
「物がつかめないキャラクターもいて…」バトンはなし
1チーム8体(ペア1組含む)で1周400mを走り、3チームで勝敗を競う(レースでは3レーン、5レーン、7レーンを使用)。とはいえ、「あまり走れないキャラクターもいますので」(同担当者)という“ゆるキャラならではの事情”を考慮して、距離は第1、2走者が各25m、3走から7走までが各50m、アンカーが100mを激走する、という変則形式だ。リレーには必要不可欠なバトンもやはり、「物がつかめないキャラクターもいて……」(同)と今回はナシ。体を優しくぶつけたり、タッチしたりして“心のバトン”をつなぐ。
スタートダッシュが肝となる第1走者の中に、スポーツ界でお馴染みのキャラクターがいた。7レーンを走る日本水泳連盟の公認キャラ「ぱちゃぽ」だ。
日本古来から伝わる空想上の生き物である河童をモチーフにしたキャラは、2001年に福岡で行われた「世界水泳」のマスコットとして誕生。あのイアン・ソープやマイケル・フェルプスの快泳の傍で独特の存在感を示したことが認められたからかは定かではないが、とにかく水連の公認まで勝ち取った立志伝中のキャラだ。
快走を見せるぱちゃぽがこのレースに秘めていた思い
「実はぱちゃぽは陸上は初めて。デビュー戦なんです」(日本水泳連盟の担当者)
「陸(おか)に上がった河童」とは、まさにこのこと。ニョッキリと生えた足が、初めて踏みしめる大地をとらえて前へ前へと進む。短い手を、時に背泳ぎ風、時に平泳ぎ風とバタつかせ、“個人メドレー”さながらの奮闘で第2走者にタッチ。河童は陸に上がっても決して無力ではない。「ぱちゃぽ」は身をもっていにしえの故事を覆してみせたのだった。
「ぱちゃぽ」には秘めた思いがあった。長引くコロナ禍においてここ数年のイベントは中止に。晴れ舞台だった大会の表彰セレモニーでの出番もカットされてきた。
「そもそも人との触れ合いが制限されてきましたし、“中の人”の感染防止対策などが難しいこともありました。9月下旬に高知で水泳の日のイベントが行われたんですが、それが3年ぶりくらいのイベント参加でした」(同担当者)
自らの存在意義を再び示すために――。それは絶対に負けられない戦いだったのだ。