今年の徳島のドラフト候補では、中山が“本命”だった。会見でも中央に座っている。それだけに指名されなければショックは大きかった。喜びを爆発させるのではなく「良かったー」という安どの表情を浮かべる。地元徳島出身だけに、球団の喜びは大きい。

　さらにじりじりした時間が続く。阪神も指名を終了。そして4巡目でオリックスが茶野篤政を指名した。この間の取材のときは「何とかしてNPB球団に行きたい。今年ダメだったらどうするかはまだ考えていません」と言っていただけに、指名されたのは我がことのようにうれしく感じた。

「今年のドラフトは厳しかった。5人は行くと」

　育成指名はなおも続いたが、これ以降は徳島の選手名がコールされることはなかった。8人の指名候補で3人指名。独立リーグでは最多だが、それでも5人が指名されなかった。

「今年のドラフトは厳しかった。5人は行くと思ったんだが」

　岡本哲司監督は、疲れた顔をして語った。

　今年はソフトバンクが四軍制を敷く。しかし独立リーグからは1人も指名しなかった。独立リーガーは年齢が高い傾向にある。「育成」を主眼にする球団の方針に合わないのだろう。

　指名された3人と社長、代表、監督、コーチがパブリックビューイング会場で記者会見をする。待ち受けていたファンから声援と拍手。この時には指名されなかった5人の姿はない。

　晴れがましい表情の3人の選手。会場から日本ハムに指名された中山に「鳴門高校の同級生だった河野竜生選手とまたチームメイトになるが？」と質問が飛んだ。

　中山は「彼は一軍で活躍している。僕は今から支配選手になるために頑張らないといけない。まず一緒にプレーできるところまでいきたい」と語る。受け答えはしっかりしていて、浮ついたところはない。来年24歳、徳島から行った選手としては最高齢。南社長は「歴史を作ってくれたな」と声をかけた。

　日隈と茶野は、徳島の人々の声援が温かくてうれしかったと口をそろえた。独立リーグの球団は「地域貢献」を大きな目的としている。それだけに地元との交流が重視される。野球漬けできた選手たちにとって、違う視野が開ける機会でもあるのだ。

指名で涙する日隈　©Kou Hiroo

独立リーガーを見るスカウトの「ピンポイント化」

　それにしてもNPBのスカウトが独立リーガーを見る目は、ますます「ピンポイント化」している。

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