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秋華賞のカギを握る“手術明け”スターズオンアースの状態は? “三冠牝馬”誕生を阻止するとしたら「潜在能力がスゴい」あの馬か
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2022/10/15 11:03
桜花賞、オークスを制し牝馬三冠がかかるスターズオンアース
三冠牝馬誕生が持つドラマ性
ノーザンファームにとってのエアグルーヴのように、スタセリタは社台ファームの「基幹牝馬」と言うべき存在になろうとしている。
これまでクラシック三冠馬は8頭、牝馬三冠馬は6頭誕生している。ノーザンファームがディープインパクト、アパパネ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイの4頭を送り出しているのが生産者としては最多なのだが、意外なことに、社台ファームの生産馬はまだ三冠馬になっていない。二冠馬は5頭いて、牡馬ではエアシャカールとネオユニヴァース、牝馬ではベガとダイワスカーレット、そしてスターズオンアース。
スターズオンアースがここを勝てば、名門が送り出した初めての三冠馬が基幹の牝系から出た――という、血のドラマになる。その可能性はかなり高いのではないか。
母パールコードが2着だった秋華賞を、馬主も調教師も騎手も母と同じアートハウス(父スクリーンヒーロー、栗東・中内田充正厩舎)が勝てば、こちらも血のドラマになる。サイン馬券ではないが、「母の忘れ物」を取りにきた娘が、春に「忘れな草賞」を勝っている、というのも面白い。前走、トライアルのローズステークスの勝ちっぷりから、サラブレッドにとって大切な、夏を越しての成長が非常に大きかったことがよくわかる。
潜在能力がスゴいあの馬は…?
重賞に昇格した2016年以降、本番との結びつきをとみに強めている紫苑ステークスを勝ったのがスタニングローズ(父キングカメハメハ、栗東・高野友和厩舎)だ。この馬はローザネイを牝祖とする「バラ一族」の1頭で、もしここを勝てば、一族としては2010年にジャパンカップを勝ったローズキングダム以来、2頭目のGI勝ち馬となる。秋華賞は3代母ロゼカラーが3着、2代母ローズバドは2着と惜しくも獲り逃がしている。「一族の忘れ物」を取りにきた。
潜在能力からして一発があってもおかしくないのがナミュール(父ハービンジャー、栗東・高野友和厩舎)だ。阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞では1番人気に支持されたのだが、4、10着に敗れた。それでもオークスでは3着と、力のあるところをあらためて見せつけた。この馬の8代母クインナルビーは、芦毛の怪物オグリキャップの5代母でもある。
心情的には、スタート前の輪乗りで他馬に顔を蹴られてオークスを競走除外となったサウンドビバーチェ(父ドゥラメンテ、栗東・高柳大輔厩舎)にも頑張ってもらいたい。