球体とリズムBACK NUMBER
C・ロナウド37歳、母国で聞いた“ポルトガル代表に必要か?”「今も偉大な選手」「W杯では必ず彼の力が必要」「ただ、戦術はちょっと時代遅れ」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2022/10/08 17:01
所属するマンチェスター・ユナイテッドでは不振が続くC・ロナウド37歳。母国・ポルトガルではどのように捉えられているのか
パイーヴァと別れスタジアムから宿までの夜道を歩く。公園の北には大きな屋台がいくつか並び、ハンバーガーやビールを片手に老若男女のフットボールファンが数台のテレビに映されたリーグ戦を眺めている。マッチデイ恒例の風景だ。
肉か魚を焼く白い煙が上がる屋台の列の最後尾に並んでいた大柄なスポルティング・サポーターに、件のCR7の質問をしてみた。
「当たり前じゃないか、ロナルドしかいないよ」と上機嫌に彼は言う。「何がすごいかって、あの集中力だ。彼はひとつ何かをやると決めたら、完全にそれにフォーカスする。特別な才能を最大限に生かせた理由のひとつだ。生まれ故郷の島で、純真な心を育んだのだろう」
ロナルドはカタールで彼らしい仕事をするだろう
予期せぬ論客の登場に、リスボンのフットボール・カルチャーの深みを感じる。眼鏡をかけた短髪の中年男性は、明るいトーンで続ける。
「37歳という年齢は今の時代、以前ほど大きな問題ではないと思う。ただ今、彼の体と心の状態が戻っていないように見えることも確かだ。でもきっとコンディションは上げてくるはず。それに最近ユナイテッドで出番が限られていることは、11月からのW杯を戦う上で、ネガティブな面ばかりではない。私の言っていることはわかるよね?」
こちらが頷いたのを確認して、「大舞台に強いと言うのは、図太さとか星回りとかもあると思うが、集中力も極めて重要だ。だからコンディションさえ上がれば──それも集中して試されるはず──、ロナルドはカタールで彼らしい仕事をするだろう」と締めくくった。
「鋭い見立てをありがとう」と言って握手をして別れた。ロナウドのキャリアでは“故郷”といえるスポルティングでの声を拾い集め、見えてきた大きな期待の声。さらに別のチーム、視点を求めてリスボンで取材を続けることにした。
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