大会前日までは判定決着を示唆していたが、2Rで決めた理由もメイウェザーらしい。

「実をいうと、日本の親しい友人から試合前に『1Rは伸ばして引っ張って、2RあたりでKOしてほしい』というリクエストがあったのです。それに応えようと思いました」

　全ては青写真通りに。試合後、記者団からは「一発もらって少しは本気になったのでは？」という質問も飛んだが、我々が定義する“本気”と、メイウェザーのそれとではまったくレベルが違う。いくらリアルなエキシビションとはいえ、前述したように全てが彼の掌の上で推移していたと考えると、“本気”という表現を使うのは少々憚られる。

　メイウェザーがイメージするエキシビションとは、リアルファイトの空気を漂わせながら、エンテーテイメントとして燦然と輝く、いわば「プロレスっぽい要素」を取り入れたものだったのかもしれない。

格闘技ファンが目の当たりにしたボクシングの奥深さ

　果たして、彼はこうも言っていた。

「自分はもう“MONEY”メイウェザーではありません。もう現役時代の動きはできないけど、フロイド・メイウェザーというものを少しでも肌で感じてもらうことができたら満足です」

　ネット上に無数に存在する現役時代のメイウェザーの試合映像を見てほしい。朝倉と対峙した彼もすごかったが、現役時代の彼はもっとすごい。全盛期はどこまで強かったのか。想像しただけでも怖くなる。

　フロイド・メイウェザー・ジュニアの正体──それは格闘技ファンが知っているようで知らない、ボクシングという名の小宇宙ではないのか。RIZINにおける彼の活躍は、この競技の奥深さを改めて教えてくれる。徐々に力は落ちているのかもしれないが、まだまだメイウェザーの底は見えない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。