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「相手は真剣、自分にとっては遊び」メイウェザーは朝倉未来に対してどこまで“本気”だったのか? 土下座まで飛び出した狂騒曲の顛末
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/10/04 11:01
2ラウンド終了間際、メイウェザーの右を被弾して崩れ落ちる朝倉未来。ボクシングルールにおいて、両者の間には埋めがたい力量差があった
「相手は真剣になるけど、自分にとっては遊び」
「1987年からボクシングに身を捧げてきたので、いまの自分があると信じています。現在は海外に移動して、たまに現地のジムに行ったりして練習したり、ときおり走ったりするけど、基本は楽しみに来ています。昨日(9月23日)もパーティーに出席して人生を謳歌していました」
2018年の那須川戦では、関係者の証言から、筆者はNumber本誌コラムで「試合当日にメイウェザーがパーティー会場に姿を現し、ビールで唇を濡らした」と記したが、第2の人生を謳歌するメイウェザーにとって、その程度のことは些細な出来事なのだろう。
さらに、メイウェザーが出場するエキシビションマッチはリアルファイトであることが強調されているが、彼にとっては日本の格闘技のライフラインともいえる「リアルファイトか否か」という問題すらも重要ではないのではないか。それゆえ、こんな発言もあった。
「エキシビションマッチに関していえば、相手は真剣になるけど、自分にとっては遊びでしかない」
聞き捨てならない言葉だ。いったいどういう意味なのか。仮説を立てよう。ボクシングルールで争われる限り、たとえどんな対戦相手であっても自分の掌の中で闘える。そういう展開にする自信があるからこそ、「真剣vs.遊び」のエキシを続けているのではないか。
メイウェザーにとってボクシングは、ビジネスである以上に習慣化したものだ。
「ボクシングは起床して朝食を注文するのと全く同じ感覚なんです」
ライフワークでもあるこの競技について、メイウェザーはこうも言った。
「自分にとってボクシングは呼吸するのと同じ。それを自分から奪うことはできない」
これはリップサービスでも大言壮語でもない。ボクシングの第一線をキープしながら50戦無敗で終えたキャリアは、メイウェザーにオンリーワンともいえるプライドを植えつけたと考えられる。
「自分はエリートの中のエリートとして、ボクシングに情熱を注いできました。YouTubeで有名になったわけではない。並々ならぬ努力によって有名になってきた。試合があれば、そこに全てを注ぎ、全ての時間を犠牲にしてやってきました。その結果、ボクシングをアートと表現しても差し支えないレベルまで高めることができた」