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「なぜ麻雀界には高学歴な選手が多いの?」京大卒のMリーグ人気実況者・松嶋桃に聞いてみた「麻雀は考えることを止めてはいけないゲーム」
posted2022/10/05 11:01
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph by
Yuki Suenaga
――弁護士を目指して勉強していたなかで、ご自身の本質を知ったということですが、どういうことなんですか?
松嶋 私は学問がすごく好きな人間ではなかったということです。勉強はゲーム感覚で、覚えたことを発揮すれば良い成績が取れるから好きだった。それだけなんですよね。弁護士になるというビジョンもふわっとしたものだったから、そこに向かう過程で自分は本当に突き進んでいいのかと悩んでしまって。
――それでドロップアウトして麻雀界に?
松嶋 いえいえ、そんな自分に気づきつつも、そのうち法律のおもしろさがわかるんじゃないかという思いもあって2年間ちゃんと通いましたし、記念受験になろうとも1回は司法試験を受けようと決めて必死に勉強しました。ただ、あまりに嫌すぎたんでしょうね、蕁麻疹は出ちゃうし、勉強していると涙が出てきちゃうし……。試験が終わったときには、「好きなことをとことんやろう」と思っていました。
司法試験の2カ月後に麻雀協会のプロ試験
――ついに麻雀プロの道を歩みだすわけですね。
松嶋 3月にロースクールを卒業して、5月に司法試験を受けて、7月には日本プロ麻雀協会のプロ試験で東京にいました(笑)。
――好きなことだと行動が素早い!
松嶋 ロースクールの頃から麻雀プロの選択肢は頭にはあったんですよね。とても健やかに生きてきたし、性格も明るいほうだと自負していたんですけど、その私が司法試験の勉強をしているだけで、こんなにも心身とも疲れているのは由々しき事態だと思って。弁護士になれたとしても健康を害する気しかしなくて、ほかの仕事も候補に入れようとなったときに浮かんだのが麻雀プロだったんです。
――弁護士を断念して麻雀プロへ。ギャップが大き過ぎますが、ご両親は反対されなかったのですか?
松嶋 気持ちを正直に伝えました。3月にロースクールを卒業してからは、5月の司法試験まで名古屋で勉強していたので、その姿を見ていたこともあって「最終的には自分のしたいようになさい」と送り出してくれました。
「麻雀が好きだから、そこに携わる仕事で食べていく」
――2010年に女流雀士になり、そこから選手に加えて実況として伝える仕事を始められます。きっかけを教えてください。
松嶋 ちょうど私がプロ雀士になった頃から、麻雀をネット配信する文化が始まったんですよね。それまではテレビで麻雀を扱うときはアナウンサーや声優の方が担当されていたんですけれど、配信だからそういう方たちに頼むのが難しいとなったときに、ふとした縁がきっかけで「実況やってみる?」と声をかけてもらって。そこからですね。