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1番人気メイケイエールはなぜ不発に終わった? 波乱のスプリンターズS、「すべての展開が味方した」ジャンダルムが生んだ“血のドラマ”
posted2022/10/03 11:57
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
好騎乗でトラックバイアスを利した伏兵が、鮮やかな勝利で20年越しの「血のドラマ」を見せつけた。
第56回スプリンターズステークス(10月2日、中山芝1200m、3歳以上GI)で、荻野極が騎乗した8番人気のジャンダルム(牡7歳、父キトゥンズジョイ、栗東・池江泰寿厩舎)が優勝。2002年の覇者ビリーヴとの、レース史上初となる母仔制覇を達成した。
なお、1番人気に支持されたメイケイエールは14着、2番人気のナムラクレアは5着に敗れた。
8番人気の伏兵・ジャンダルムの勝因とは?
この日の中山芝コースは内がよく伸び、前が止まらない傾向があった。
1枠2番という絶好枠を引いていたジャンダルムは、メンバー中一番と思われる速いスタートを切った。内からテイエムスパーダ、外からファストフォースが上がってくるとそれらを先に行かせ、近くに他馬のいないポケットになった3番手をストレスなく進んだ。
そのままスムーズに3、4コーナーを回り、ラスト400m地点でファストフォースの手応えが悪くなるとその内に進路を取り、さらに内にいたテイエムスパーダに並びかけて直線へ。
ノーステッキのままラスト200m地点で先頭に立ち、ラスト100m付近で荻野が初めて左ステッキを入れた。
その叱咤に応えてジャンダルムはさらに末脚を伸ばし、馬群を割ってきたウインマーベルの猛追をしのぎ、通算29戦目にしてGI初制覇を遂げた。騎手デビュー7年目の荻野にとっても、3度目のGI騎乗で手にした初めてのGIタイトルとなった。
「ジャンダルムと、関係者のみなさまに感謝したいです。いい枠でしたし、課題のスタートもこなしてくれて、道中、直線とスムーズに運べました。手応えどおり、しっかりと伸びてくれて、力を出せたと思います」
そう荻野が話したとおり、速いスタートを切って、無理に主張せず、内の好位置におさまってスパートのタイミングをはかることができたことが勝因となった。