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1番人気メイケイエールはなぜ不発に終わった? 波乱のスプリンターズS、「すべての展開が味方した」ジャンダルムが生んだ“血のドラマ” 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2022/10/03 11:57

1番人気メイケイエールはなぜ不発に終わった? 波乱のスプリンターズS、「すべての展開が味方した」ジャンダルムが生んだ“血のドラマ”<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

スプリンターズSを制したジャンダルムと荻野極

上位5頭が内枠…すべてがジャンダルムに味方した

 また、首差の2着だったウインマーベル、そこから3/4馬身差の3着だったナランフレグの2頭がともに、スタート直後に他馬と接触し、それぞれの騎手が思っていたより1列後ろになったことも、ジャンダルムにとってはプラスに作用した。

 さらに、1番人気のメイケイエールが7枠13番、3番人気のシュネルマイスターが8枠15番という外枠を引いて伸び切れず、直線で互いの動きによって進路が狭くなる不利があるなど、すべての展開がジャンダルムと荻野に味方した感がある。

 掲示板に載った5頭の馬番が、2、7、6、4、9だったことも、内が有利なレースだったことを示している。

 前述したように、ジャンダルムの母ビリーヴは、2002年に新潟で行われたスプリンターズステークスを武豊の手綱で制している。これはサンデーサイレンス産駒による初めてのスプリント制覇だった。翌03年の高松宮記念を「アンカツ」こと安藤勝己を背にして勝ち、GI2勝目をマーク。これが安藤にとってJRA移籍後初のGI勝ちとなった。そう、この母仔は、どちらも鞍上に初のGIタイトルをプレゼントしているのだ。

 馬主は、母仔ともにノースヒルズ代表の前田幸治氏。前田氏は、ビリーヴをアメリカで繁殖牝馬にした。そして、その仔たち――ファリダット、フィドゥーシアらを「逆輸入」のような形で日本でデビューさせ、ついに「末っ子」のジャンダルムでGIを制した。

メイケイエールはなぜ不発に終わったのか?

 さて、先に触れたように、メイケイエールは本来の走りができず、14着と大敗してしまった。好位4番手の外目をスムーズに進んでいたが、引っ張り切れないほどの手応えではなかった。3、4コーナー中間地点では、もう池添謙一の手が動いていた。直線での不利もマイナスではあったが、それがなかったとしても、この日の動きでは、勝ち負けを望むことはできなかっただろう。

「中2週と間隔が詰まっていたことくらいしか、敗因が見つかりません」と池添。確かに、目に見えない疲労が蓄積したような走りだった。勝つときは、一歩間違えば「暴走」しそうな雰囲気を感じさせながらも、それを末脚の爆発力に転換させてきたのだが、そうした危なっかしさすら、この日は感じさせる場面がなかった。

 しかし、脚元など、フィジカル面に問題さえなければ、また立て直すことができる。今後の動向に注目したい。

 メイケイエールが敗れたことにより、昨年のホープフルステークスからつづいている平地GIでの1番人気の連敗が、さらにワースト記録を伸ばす「14」となった。「記録」と呼ぶのもどうかと思うようなこの流れを断ち切るのは、10月16日の秋華賞の本命馬か。それとも23日の菊花賞の1番人気馬か。現時点では1番人気を予想することも難しい混戦模様で、またも嫌な予感がする。

【次ページ】 日本馬が凱旋門賞に挑み続ける意味

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