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ドイツの至る所で「KAGAWA」と日本人に声かけ… 香川真司21歳の“最強GKノイアー相手にダービー2発”が現地大絶賛だったワケ 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byFriedemann Vogel/Getty Images

posted2022/09/19 17:03

ドイツの至る所で「KAGAWA」と日本人に声かけ… 香川真司21歳の“最強GKノイアー相手にダービー2発”が現地大絶賛だったワケ<Number Web> photograph by Friedemann Vogel/Getty Images

2010年のレビアー・ダービーに出場した香川。当時から最強GKとして知られていたノイアー相手に2得点を奪った

 そんな状況で、ドルトムントは、宿命のライバル・シャルケと、アウェーでレビアー・ダービーを戦った。世界で最多の観客を集めるブンデスリーガのなかで、最も熱狂的と言われるダービーである。

 2010年9月19日に行なわれたのは、リーグ戦で77回目となるダービーだった。トップ下で先発した香川は前半20分にこぼれ球を拾うと、ペナルティエリア外から先制点をたたき込む。そして、後半13分には右からのクロスに、ジャンプして合わせ、2点目を決めた。

「ダービーでゴールを決めてくれれば、他の試合で活躍しなくてもヒーローになれる」

 サポーターがそう語るほど大事な試合で、2ゴールを決めて宿敵を下した。

 開幕4試合目に組まれたダービーの勝利で勢いをつけたドルトムントは、このシーズン、9年ぶりの優勝を果たすことになる。

クロップ監督が日本人へ情熱的に訴えかけたこと

「ドイツに来てから最高の日になりました」

 試合後に香川はそう語り、クロップ監督は日本人にむけて情熱的に訴えかけた。

「この試合を日本で見られなかった人がいたら、あとでもいいから見る機会が得られることを願うね。それだけの価値がある」

 それからは、スーパーでも、タクシーでも、空港の入国審査でも、日本人は「KAGAWA」と声をかけられるようになった。ドイツで最も熱いサポーターを抱えるドルトムントの、最も大切な試合で、2ゴールを決め、奈落の底に落ちかけたクラブの復興を決定づけた。

 そこまでのストーリーと背景があるからこそ、ドイツ人は香川の活躍に熱狂し、心を奪われた。

 その歴史と文化を解さない日本人には、あの試合での活躍の本当の意味はわからない。だから、あのときの香川への評価は日本よりもドイツでの方が高いままである。興味深いのは、あの試合やシーズンが香川にとっての最高の試合やシーズンではないということだ。

 最も重みがあったタイトルは、2017年のドイツ杯優勝だと香川は言う。それは、監督にベンチ入りメンバーから外された時期があり、自分でも信じられないようなミスをしていたところから這い上がり、最後にはレギュラーポジションをつかみ、獲得したタイトルだからだ。

「深く考えなくても、全てが……」

 香川は2010年当時について、こう考えている。

【次ページ】 「深く考えなくても、全てが……」

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