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「なぜ離婚するメジャーリーガーが少なくない?」貧しい家庭から成り上がった名ピッチャーが明かす、野球選手の“意外に弱いメンタル”
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2022/09/20 17:01
カージナルスなどで活躍した名ピッチャー、ボブ・テュークスベリー。その“華麗な”セカンドキャリアとは?
「それがその試合の三九球目だったが、私にとってはその試合で初めての『意味のない球』になってしまった。『意味のない球』というのは、その前の球を際立たせることも、次の投球を組み立てることに役立ちもしない、何の効果もない球という意味だ」
野球というスポーツに、無数の伏線が張り巡らされていることが分かる。だから、面白いのだ。
「ルーティンを決める」「深呼吸する」
彼は1998年に引退するが、一念発起してボストン大学でスポーツ心理学とカウンセリングの修士号を取得し、ボストン・レッドソックスのメンタルスキル・コーチに就任する。
2013年、レッドソックスはワールドシリーズでカージナルスを破って優勝したが(最後のアウトを取ったのは、クローザーの上原浩治)、このシーズンの後半戦に大活躍したのが先発のジョン・レスターだった。
私はレスターの贔屓だったが、2013年は本当に頼りになるエースだった。ところが、そのシーズンの前半戦はパッとせず、後半戦になってから相手をドミネート、圧倒し出した。
当時の報道では「制球力がよくなった」「落ちつき、自信を取り戻した」という論調が目立ち、私もそれを鵜吞みにしていた。
それは間違ってはいなかった。しかし、テュークスベリーとレスターが共に開発したオーダーメイドのメンタルトレーニングによって、レスターが生まれ変わったことが明らかにされる。そのスキルは、次のようなものだ。
・試合に臨むにあたってのルーティンを決める(これが興味深い。ぜひ、本文にあたって欲しい)
・エラー、審判の誤審などがあっても、先回りせず、次のことに集中する
・深呼吸をする