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男子バレー西田有志(22歳)のスゴさとは? 清水邦広が面食らった“物怖じしない世代”のコミュ力「スーパーアグレッシブです、あいつは(笑)」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKiyoshi Sakamoto/AFLO
posted2022/09/05 11:02
当時19歳の西田有志(右から2番目)と初めて会話した時の思い出を語ってくれた清水邦広(一番左、写真は19年W杯)。世界選手権を戦う後輩たちにエールを送った
「僕らが若い頃って、ベテラン選手に話しかけるのちょっと怖いな、というのがあったんですけど、今の若い選手はそういうのが全然ない。特に西田なんて、先輩にもどんどんコミュニケーションを取ってきます」
清水は、西田と初めて会話した時のことを鮮明に覚えている。
西田が代表に初招集されたのは2018年だが、当時、清水は右膝の前十字靭帯断裂など選手生命を脅かす大怪我を負い、代表を離れていた。懸命のリハビリを経てコートに戻り、翌19年、代表にも復帰を果たす。そこで初めて西田とチームメイトになった。
「僕が代表に合流した時に、西田が『清水さーん!』ってすぐに話しかけてきたんです。一番最初に言われたのが、『僕のお母さんも膝、清水さんと一緒の怪我してたんっすよー』ですよ。すごいなーと思いました(笑)」
当時、清水は32歳、西田は19歳。そんな年の差などお構いなしの距離感に面食らった。
「スーパーアグレッシブです、あいつは(笑)」
清水が昨年まで背負っていた日本代表の背番号1を、今年、西田が引き継いだ。同じオポジットでサウスポーの西田のすごさを、清水はこう語る。
「スパイクはもちろんなんですけど、やっぱり一番すごいのはサーブだと僕は思います。西田のプレーを見て、『オレだったら』って結構考えるんです。西田はこういうプレーをする、じゃあオレだったらこういうプレーできるかな?って。スパイクは僕も自信を持っているところがあるので、あまり(違いが)わからないんですけど、サーブに関しては『やっぱり違うな』と思います。
何がすごいかって、ミスをしても攻め続けられること。例えば1本目ミスした、2本目、3本目もミスした、となったら、僕なら『次は入れていこう』という考えになってしまう。試合を通して弱いサーブしか打てない心境に陥る。でも彼は3本ミスったとしても、『次4本目にSP(サーブポイント)取ればいいんでしょ』というスタンスなんです。どんなにミスをしていても、ポイントを取りにいく、崩しにいくというスタンスは変えない。それがめちゃめちゃすごい。なかなかできるメンタルじゃないと思う。
だから相手も『今日(西田のサーブ)入らんわ』と思っていても、『入ってきたら怖いな』というのがある。Vリーグで西田がいたジェイテクトと対戦していた時は、点差が4、5点あっても、次西田のサーブで5点巻き返されるかもしれないという怖さが常にありました。それだけ彼のサーブの威力はすごい。西田マジックですね。スーパーアグレッシブです、あいつは(笑)。
弱気になった時点で、いいサーブは絶対に入らない。それは僕もわかっているから、あえてポジティブなことを思ったり言ったりすることで不安を上書きして、強気でやろうとするんですけど、何本もミスしたら怖くなったり、プレーが縮こまったりする。それが彼にはない。だから世界でベストサーバーになれるんだと思います」