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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「イチローはそれを上回る努力」「夜中1、2時にカーンと」64歳名伯楽が語る“10代の鈴木一朗”と独立Lドラフト候補に感じる差とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo/Koji Asakura
posted2022/09/05 11:01
独立リーグ愛媛で監督を務める弓岡敬二郎氏はオリックス時代のイチローをどのように見ていたのだろうか
「2年目の秋、宮古島のキャンプで、イチローに足を椅子の上に置かせて筋肉や関節をチェックしたことがありました。触ってみると、ものすごく硬かった。硬い=強いではあるんですが“柔らかくせんと、怪我するぞ、柔軟体操、ストレッチをしっかりせなあかんぞ”とアドバイスしました。そこからあいつは自分で勉強して、鳥取のワールドウィングジムにも通って股関節を柔らかくしました。そして最後には普通の人では考えられないくらい柔らかい身体になった。
あいつは指導者がアドバイスをすれば、それを上回る努力をするんですね。打撃でも河村健一郎さんや新井宏昌さんが指導しましたが、イチローはそれを上回る努力をしたんだと思いますよ。
プロに入って成功するかしないかは、人が見ていないところで、どれだけ努力をするかで決まるんですね」
再び愛媛で指導……一貫して大事にしていることとは
1991年に引退してから、弓岡敬二郎は一軍、二軍コーチ、フロント、二軍監督など様々な役職を務めた。阪急、オリックスでのキャリアは30年以上に及んだ。
その後、四国アイランドリーグplusの愛媛マンダリンパイレーツの監督に就任。1年目の前期は最下位、後期2位だったが、2年目の2015年後期にリーグ優勝すると、シーズン総合優勝。翌2016年は前後期優勝、そして2015年は、ルートインBCリーグの優勝チームとのグランドチャンピオンシップでも勝利して「独立リーグ日本一」に輝いた。
愛媛は総合優勝も、日本一も球団史上初めてであり、その後も記録していない。
弓岡は2016年オフに育成統括コーチとしてオリックスに復帰するが、愛媛マンダリンパイレーツは弓岡の背番号「77」を永久欠番にして、その業績をたたえた。
そして2022年、弓岡は再び愛媛に帰ってきた。
「(独立リーグの選手は)やらされている感じやね。練習はここまで、言うたらそれだけしかしない。実はそれから後の時間の方が長い、そこで何をするかが大事なのに。
メジャーリーガーの全体練習は少ないと言っても、そこから自分でやりますからね。練習では緩い球ばかり打っているけど、裏では160km/hのマシンを打っていると言いますからね。
でも、うちにもNPBに行けそうな素質を持った選手は2~3人はいるんですよ。スカウトからも声がかかっているし、調査書(NPB球団からドラフトの前に独立球団に送付される「身上調査書」)ももらうとは思うんですが、そこからが難しいんですね。独立リーグで一段抜けたレベルになったとしても、そこにもたくさんいい選手がいる。そこで抜けないと、ドラフトにはかからない」
自分で進化できないと、ドラフトにかからない
弓岡が考える「抜けるための要素」とは何か?