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「ビューティ・ペアを超える」スターダム中野たむ&なつぽいが目指す“女子プロレスの王道”「夢は武道館で単独ライブ」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/08/27 11:04
タッグ王座「ゴッデス・オブ・スターダム」を戴冠し笑顔の中野たむ(右)となつぽい
だが今は「トラウマを克服しました」とはっきり言える。
「ベルトを巻いたことはもちろんですけど、なつぽいという最高のパートナーを得てチャンピオンになれたのが大きかったと思います」
タッグ王座という諦めた夢、そのトラウマを克服する唯一の方法がなつぽいとベルトを巻くことだった。それを成し遂げたから、勝って泣いた。同時に2人の可能性を信じきっていたから、ベルトを巻いて笑うこともできた。なつぽいは言った。
「私がやることは、たむちゃんの隣にいて一緒にトラウマを克服することでした。これからもそう。楽しいことだけじゃなく苦しいことも2人でなら受け止められる。乗り越えられる」
「ビューティ・ペアを超えるタッグになる」
なつぽいがたむと組むことにしたのは、スターダムの枠を超えて女子プロレス界に“革命”を起こすためだ。最初は自分1人でやろうと考えていた“革命”だが、たむとならもっとうまくできると思うようになった。タッグ王座獲得はその足がかり。試合後のインタビュースペースで明かされた革命の一環は「アーティストデビュー」だった。
「私たちは令和のビューティ・ペアになる。いや、ビューティ・ペアを超えるタッグチームになります」
たむの言葉には意表を突かれた。単にライブがしたいとかCDを出したいとか、そういうレベルではなかったのだ。なつぽいはこう言った。
「歌って踊る女子プロレスラーの元祖がビューティ・ペアじゃないですか。大ブームだったんですよね。私とたむちゃんはビューティ・ペアを超えるくらいになりたい。そうやって女子プロレスを世の中に広めたいです。やっとこの時がきたって感じです。プロレスラーになって7年、いや芸能の世界に入ってからずっとですね。これがやりたかったんだって思ってます」
夢は武道館での単独ライブ
なつぽいは幼い頃から芸能活動を始め、プロレス入りした頃は演劇に打ち込んでいた。プロレスラーになってからは、二足の草鞋の両立が常にテーマだった。2020年のスターダム入りは業界最大の団体でプロレスに集中するため。だが親会社のブシロードはメディアミックス作品の舞台やライブも手がけていた。なつぽいは今年1月、舞台『アサルトリリィ』のキャストに抜擢される。その手応えから「スターダムと外の世界の架け橋になりたい」とあらためて思うようになった。それができるのは私しかいない、という自負もあった。だから「1人でやろうと」していた。
ところがたむと「バチバチやり合って、意識し合って」いるうちに、2人でならもっといい「架け橋」になれると感じた。プロレスだけでなく、それを世間に広めるためのパートナー。夢はアーティストデビューだけではない。日本武道館での単独ライブだという。
「私たちがなりたいのは女子プロレスで一番のタッグ、かつアーティストとしても一番。ダブルナンバーワンなので。アーティストになりたいならベルトは絶対に必要でした。強くてカッコよくて、歌って踊れて可愛い。そんなレスラーもそんなアーティストも、私たち以外にはいないなと(笑)」(たむ)