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「ビューティ・ペアを超える」スターダム中野たむ&なつぽいが目指す“女子プロレスの王道”「夢は武道館で単独ライブ」
posted2022/08/27 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「タフすぎますよ、彼女たち」
そう言ったのは、大会のゲスト解説を務めたエル・デスペラード(新日本プロレス)だ。
女子プロレス団体スターダムは、7月23日、24日の名古屋国際会議場大会2連戦に続いて8月21日にドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)大会を開催。“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダム選手権をはじめとする5大タイトルマッチがラインナップされた。大都市とはいえ地方で2カ月連続のビッグマッチは異例だ。
それだけでも団体の勢いを感じさせるが、現在スターダムではシングルリーグ戦「5★STAR GP」が進行している。新日本プロレスでいえば、G1クライマックスの最中にタイトルマッチが組まれるということ。ファンも息つく暇がないし、何より選手たちの頑張りに頭が下がる。
ベルトを巻いて涙、そして笑顔に
8.21名古屋大会、各タイトルのチャンピオンたちが強さを見せる中で唯一のベルト移動となったのがゴッデス(タッグ王座)選手権だった。葉月&コグマのFWCを下したのは中野たむとなつぽい。2人でのタッグ王座挑戦は初めてであり、どちらも初戴冠となった。ベルトを巻くと2人は涙を見せ、それからこれ以上ない笑顔を見せた。その感情の起伏も彼女たちらしかった。
なつぽいもたむも“女優によるプロレス団体”アクトレスガールズ出身だ。タッグを組むだけでなくプライベートでも仲がよかった。ただ、たむにとって先輩のなつぽいは「雲の上の存在」だった。自分の道を進もうと決めたたむは団体を離れ、スターダムで苦闘を重ねながらも出世していく。自身のユニット「コズミック・エンジェルズ」を率いるようにもなった。
なつぽいも東京女子プロレスを経てスターダムへ。ユニットはDonna del Mondo(DDM)。たむとは敵同士になった。昨年、たむが保持していた“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム王座になつぽいが挑戦すると、秘めていたライバル意識が爆発する。感情むき出し、泣きながら頬を張り飛ばす光景が大技よりも印象に残った。
「息が合わないこともある」それでも…
今年6月には、なつぽいの挑発からシングル2連戦。1勝1敗という結果以上に大事だったのは、激しくやり合う中で気持ちが通じ合ったことだ。強く意識するから、考えていることが分かる。もともと物事に対する好み、考え方が似ている部分もあったのだろう。「たむちゃんは敵なのに味方よりも自分の考えが分かっていました」となつぽい。
7月、なつぽいがDDMを離れコズエンに加入。たむとのタッグが実現した。アクトレスガールズ以来の再結成でもある。王者チームからの指名でベルト挑戦が決まったものの、2人で組んだのはスターダムでは数えるほど。それぞれの意志の強さから「息が合わないこともある」と、たむもなつぽいも語っていた。それでも勝つことができたのはなぜか。