上谷とひめかのスターダム“黄金世代”対決

　セミファイナルでは、白いベルトのチャンピオンである上谷沙弥がひめかを相手に9度目の防衛。直前で体調不良により欠場になったが、当初は高橋と同じスターダム卒業生、WWEでも活躍したKAIRIと対戦予定だった。この試合もやはり歴史との闘いだったのだ。

　しかし、KAIRIの欠場で急きょ、ひめかとのタイトルマッチに。上谷とひめかはスターダムの“黄金世代”と呼ばれる。歴史との闘いから同世代の対決。試合の意味合いは180度変わった。

　ひめかの試合ぶりから、準備不足はまったく感じられなかった。ジャンピングニー、雪崩式フランケンシュタイナーを切り返してのパワーボム、上谷のスワンダイブ式ドロップキックをも撃ち落とすラリアット。持ち味のパワーファイトは過去最高に輝いたと言っていい。とてつもないポテンシャルに「化け物かと思った」と上谷。

　逆に言えば、上谷はひめかの能力をこれまでにないほど引き出し、受け止め、その上で勝ったということだ。チャンピオンらしい試合だったし「この試合がひめかの分岐点になるなら、しっかり（チャンピオンとして）向き合えた証拠だと思います」というコメントを残してもいる。

　上谷はKAIRIのカムバック参戦以来、常に彼女を意識してきた。KAIRIはかつて、白いベルトの代名詞のような存在だった。だが他ならぬKAIRIから、（KAIRI戦に）先走って目の前にいる挑戦者に向き合っていない、ベルトが泣いていると指摘された。

「私は不器用で、先走ってしまうところがある。だから今日の試合では（急に決まった）相手としっかり向き合うことがテーマでした。ひめかとの闘いは、KAIRIさんに言われたことへの答えでもあります」

女子プロレスの“王道”へ

　朱里と上谷は歴史との闘いで結果を出した。なつぽいとたむは「ビューティ・ペア超え」宣言で歴史を意識し、ファンにも意識させた。

　今のスターダムは、そういうフェイズに入っているということだろう。ブシロードグループ入り以降、業績はひたすら右肩上がり。その成長ぶりから、“現在の業界トップ”だけでなく“女子プロレス史上最高、最大”を見据えるところまできたのだ。歌って踊ることだって、ビューティ・ペアからクラッシュ・ギャルズ、そしてその後も続いた女子プロレスの“王道”。

　歴史を相手にすれば、オールドファンからの批判や冷笑に晒されるかもしれない。だがそうした反応まで含めて、スターダムは自分たちの世界を拡大していくことになるのだ。いずれ冷笑家たちも、たむとなつぽいのCDを買うかもしれないではないか。彼女たちのタフさをナメてはいけない。

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