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長谷部誠38歳「僕から監督に信頼の念を送る。その結果…」ブンデス16年目でも“スーパーサブ・リベロ”でいられる心の成熟
posted2022/08/27 17:01
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Alex Grimm/Getty Images
(全2回の1回目/#2を読む)
ドイツ・ブンデスリーガの2022-2023シーズンが開幕した。フランクフルト中央駅からスタジアム行きのトラム(路面電車)に乗り込むと、新調されたユニホームを身に纏ったサポーターたちが上機嫌で語らい合っている。
ブンデスリーガの観戦環境は比較的治安が良いと言われている。中には羽目を外す者もいるが、他のヨーロッパ地域の国々と比べると、子ども連れや女性の姿が目立つのが特徴的だ。
荒くれ者で知られるサポーターから受ける愛情
フランクフルト・アム・マインを本拠地とするアイントラハト・フランクフルトは昨季、前身のUEFAカップから数えて実に42年ぶり2度目のUEFAヨーロッパリーグ制覇を成し遂げた。その歓喜と熱狂は2カ月以上が経過しても収まらず、ブンデスリーガを主催するドイツサッカー連盟(DFB)は、今季の開幕戦でフランクフルトと前人未到のリーガ10連覇を達成したバイエルン・ミュンヘンというカードをマッチメイクした。
アイントラハトのホームスタジアム『ドイチェ・バンク・パルク』に到着すると、スタジアム周辺がいつもより人で溢れかえっていた。ドイツのサポーターは試合が開始される随分前からスタジアムに集結する。試合前も後も、仲間とかけがえのない時間を過ごす。スタジアムはサポーターにとっての社交場であり、リーガに限れば2週に一回のホームゲームは旧知の者たちが語らう集会の場でもある。
ドイツのスタジアムグルメはいたってシンプルだ。ビールを片手にソーセージを挟んだパン、あるいはポテトフライに舌鼓を打っている。稀に小洒落たピザを売る屋台も出るが、概してドイツ人は定番を好むため、奇をてらったものはあまり受けない。この国の住人は良い意味で一途なのである。
一途な気持ちは愛するクラブへのサポートにも投影されている。
自らの生涯を愛するクラブと共に歩む。アイントラハトのサポーターはドイツ国内でも屈指の荒くれ者として知られるが、粗暴にも映るその態度は滾るような愛情の証でもあるのだ。
長谷部誠のルーティンは決まっている
キックオフ時間が近づくにつれてボルテージが高まっていく。両チームの選手たちがウォーミングアップのためにピッチへ現れる。バイエルンの“輩”には激しいブーイングを浴びせ、アイントラハトの“仲間”にはありったけのコールを送る。
その中には、このクラブで9シーズン目を迎えた長谷部誠の姿があった。