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イタリア2大会連続W杯予選敗退の真相 「世界の破滅」と激怒ムードだった前回より、さらに深刻な問題は…〈欧州王者の急転落〉
posted2022/04/08 17:01
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
欧州王者イタリアは自滅した。
3月24日、カタールW杯欧州予選プレーオフに臨んだイタリア代表は、北マケドニア代表に0-1で敗れ、本大会への道を断たれた。W杯優勝4度を誇る伝統国であり、昨夏のEURO2020を制した現欧州王者が予選で敗退した衝撃は大きい。
まさかの結末に、アッズーリの主将キエッリーニは虚空を見上げた。
「うまく説明できない。言葉が見つからない」
イタリアは、前回の18年ロシア大会予選で60年ぶりに出場を逃した屈辱から再起し、カタール大会の出場権獲得へ並々ならぬ決意で臨んでいた。堅守偏重の伝統から脱却し、ダイナミックな攻撃サッカーで世界中を魅了しながらEUROを制したのは、わずか9カ月前のことだ。
それだけに、栄光の頂点から奈落の底への急転落は、カルチョの国に深い陰鬱をもたらしている。
「つらい。つらすぎる」(司令塔ジョルジーニョ)
再び味わう挫折はあまりに苦い。
北マケドニアの“イタリア流”に屈した
シチリア島パレルモで行われた北マケドニアとの試合は、スコアを除けば、イタリアのワンサイドゲームだった。試合内容を率直にいえば、FIFAランキング6位のEURO優勝国とプレーオフ参加国中最低の67位のそれを反映したものに他ならなかった。
開始15分時点でイタリアのボール支配率は72%に達し、目下セリエA得点ランク1位タイのFWインモービレや同5位タイのFWベラルディらが合計32本のシュートを打った。CK数は16対0、数字だけでみれば圧倒的優勢だった。
だが、イタリアはゴールを奪えなかった。
赤地に黄色の日章を戴くバルカン半島の小国から来た男たちは、自陣ゴール前に4人をボックス状に配し、あらゆるシュートコースを塞ぐ一方、交代の先手を取って後半からじょじょにボールを取り返した。
92分、ゴールキックの流れから、FWトライコフスキが思い切りよく振り抜いた低いミドルシュートが、アッズーリへのとどめだった。今、サウジアラビア1部にいるトライコフスキにとって、試合会場「レンツォ・バルベラ」は、15年から4年間プレーしたパレルモ時代に慣れ親しんだグラウンドだった。セリエA通算4得点の無名FWが大仕事をやり遂げた。
「試合前、選手たちに『このゲームを楽しんでこい』と伝えて送り出した。我々は(守り耐えた末の一撃にかける古典的)“イタリア流”で本家に勝ったのだ」(北マケドニア代表ミレフスキ監督)
“つないで、崩して、打つ”に固執するしかなかった
一方でアッズーリの指揮官マンチーニは、EUROを制した“つないで、崩して、打つ”スタイルに固執した。否、そうするしかなかった。