「今の村上からは想像がつかないですけど、当時はあまり凄みはないな、という印象でした。真っすぐとスライダーで外の配球を組み立てていたと思います」

高校2年時の村上(2016年)　©Hideki Sugiyama

　夏の甲子園では4試合中3試合に先発し、チームも2季連続ベスト4入り。もはや村上との立場は完全に逆転していた。2度目のマッチアップは2年秋の準決勝。先発を任された川端は、初回表に空振り三振、4回表は中飛と村上を抑え込む。

村上に対しては徹底的に外角を攻めた川端　courtesy of Kento Kawabata

村上に対して、1球だけ投じた内角のストレート

　迎えた6回表の第3打席。川端はある試みに出た。それまで徹底していた外角攻めに、内角を織り交ぜたのである。「村上に対して、内角は多分その1球しか投げていないと思います」。力を込めて投じたストレートは、村上の腰付近に当たった。

「めっちゃ睨まれました（笑）」

　村上は鋭い視線をマウンドに向けていた。

　昨年、野次を飛ばしてきた阪神ベンチに向かって凄んだ気の強さは、当時から健在だった。ただ、死球となったこの1球は、翌年の夏に大きな意味を持ってくる。

　川端－田浦のリレーでライバルを1－0で振り切り、勝利。次戦の決勝も制し優勝すると、九州大会ではベスト4進出。高3のセンバツでも全4試合でマウンドに上がり、最速は148キロまでアップした。甲子園で3季連続となるベスト4入りを果たした彼らにとって、2017年夏の目標は、熊本に初となる深紅の大優勝旗を持ち帰ることだった。

病室から川端先発を指示した鍛治舎監督

　しかし、悲願へと突き進む秀岳館の前に、九州学院が立ちはだかる。2017年7月24日、夏の熊本大会決勝。川端は大会5試合目となる先発マウンドに上がった。

　陣取る一塁ベンチに、鍛治舎監督の姿はなかった。3日前の21日に突発性不整脈の診断を受け入院。23日の準決勝から山口幸七部長が監督代行を務めていた。鍛治舎監督は、病室から準決勝、決勝の川端先発を指示した。

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