カウント1-1から、山田が大橋を見て笑いながら頷く姿を見て腹を決めた。

「直球で押してくるかな？　って頭にあって。カウントを取られても狙ってみようと」

　3球目のストレートをバックスクリーンに叩き込む。「完璧でした」と浅野自身も頷く、自画自賛の豪快な一発だった。

　山田を圧倒した結果にはなったが、浅野には相手の能力を肌で感じた1球があった。

　それは、5回の第3打席の初球だ。

「他の選手が低めの変化球を空振りしていたので『自分は振らない』と決めていたんですが、1球、『真っすぐかな？』と思ったらストンと落ちて。いい投手だなと思いました」

　3打数3安打、2打点、1本塁打。

　昨年夏から甲子園のマウンドを経験し、センバツ準優勝と百戦錬磨の好投手との真っ向勝負。チームは接戦の末に敗れたが、張った声には充足感が滲んでいた。

「いい投手から3安打できたことは嬉しいことです。めちゃくちゃ楽しかった」

山田vs浅野は「剛と剛の名勝負」だった

　18.44メートルの距離で想いが共鳴する。

　完敗と認めた山田も、ただ悔しさをにじませるだけではなかった。

「ナイスバッティング！　さすがやな」

　試合後の挨拶でそう声をかけた近江のエースは、浅野に敬意を表した。

「大会No.1バッターと対戦できてすごく嬉しかったです。次のステージでもまた戦いたいと思わせてくれました」

　腹の探り合い。1球の駆け引き。剛と剛のプライドの激突。対戦成績だけでは測れない、ハイレベルな戦いがあった。

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