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「サンペイ、三振してもいいからさ」“おかわりくん”ブレイク前夜の西武・中村剛也を救った言葉《祝・史上14人目の450本塁打》
posted2022/08/13 17:02
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Hideki Sugiyama
埼玉西武ライオンズの中村剛也が8月12日の東北楽天イーグルス戦で、史上14人目の450号本塁打と、史上45人目となる1000得点を同時に記録した。
450本のホームランは現役では文句なしのトップ。08年~09年、11年~12年、14年~15年とそれぞれ2年連続で計6度の本塁打王に輝き、満塁弾に至っては現役最多の22本。
稀代のアーチストにまた1つ、偉大な記録が増えた。
ホームランも三振も同じフォームで
中村にホームランの話題を振ると、いつも雲をつかむような心境になる。
「打てるときは打てるし、打てないときは打てない」
「打てるボールは打てるけど、打てないボールは打てへん」
「ホームランが打てる理由は、考え過ぎないこと」
本塁打王を続けて獲得していた当時にはこんなことも語っていた。
「ホームランを打つときと、三振をするとき、できれば全く同じフォームでバットを振りたい」
投手の失投を逃さず仕留めること。そして、フォームを崩されることなく、自分の理想の形でバットを振り続けること。
中村がバッティングにおいて大切にしていることは、月日を重ね、中村との問答を続けるうちに、ゆっくりとだが、少しずつ理解できるようになってきた。口下手だが、こちらが真意を知りたいと食い下がれば、時間をかけて説明をしてくれる人だからだろう。
今シーズン、中村に話を聞いた際にもう一度、尋ねてみた。ホームランと三振を全く同じフォームでスイングしたいという思いに変化はないのだろうか。
「うん、今も変わっていないですね。やっぱり、相手ピッチャーや相手チームに『一歩間違えたら(スタンドまで)行かれたな』って思わせたい。三振はね、本当はしたくないんですけどね、アハハ。でも空振りしたときでも、しっかりとしたスイングで空振りできるようにとは思ってやっています」