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羽生結弦の振付師「『プロ転向おめでとう』と連絡したら、すぐに彼から…」シェイリーン・ボーンが振り返る「ユヅは自分の『声』を持っていた」 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2022/08/10 11:04

羽生結弦の振付師「『プロ転向おめでとう』と連絡したら、すぐに彼から…」シェイリーン・ボーンが振り返る「ユヅは自分の『声』を持っていた」<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

2014ー15シーズンに使用したオペラ座の怪人(左)/インタビューに応じたシェイリーン・ボーン氏(右/2016年撮影)

「初めて会った時、ユヅはすでにオリンピックチャンピオンになっていたのに、スケーターとしてもっと上達していきたい、という強いモチベーションを持っていました。自分にはもっとできる、特にスケーティングなど、もっとうまくなりたいという意志と意欲を持っていた。アスリートとしてすでに最も大きな目標を達成していたにも関わらず、まだ自分の能力を最大限に発揮していない、と感じていたのです。それは驚くべきことで、とても強く印象に残っています」

 もう一つ印象に残っているのは、彼の身体能力だったという。

「ユヅは振付作業をしている最中に、すぐにその動きをさらいながら3アクセルを入れてみるんです。普通は振付の最中にジャンプをする選手なんていません。みんな振りをさらって覚えるだけで手いっぱいですから。でも彼は必ず、ジャンプを入れてその感触を確かめて、振付を演じながらジャンプを入れることが可能かどうか細かくチェックしていました。これは彼が普段からどれほどよくトレーニングしているかということの証明でもあり、何という才能だろうかと思いました」

「彼は自分の『声』を持っていました」

 また羽生は当時から、すでに自分が表現したいものをよくわかっていたという。

「当時のユヅはまだ本当に若かったけれど、すでに自分の意志、発信したい自分の『声』を持っていました。今でもよく覚えているのですが、最初にブライアン(・オーサー)から振付依頼の電話があった時、『ユヅはもう滑りたい曲を決めているのだけれど、それでも構わないか』と打診してきたのです。私は『やりたいことがあるのは、素晴らしいことだわ』と答えました」

 ボーン氏が手掛けたフリーは5作品とも、音楽は全て羽生本人が選んだものだ。SPではジェフリー・バトル氏とのコラボで新しいジャンルの音楽などにも挑戦していった一方で、フリーでは最初から自分が演じたい音楽、表現したいイメージとそのコンセプトをある程度固めて、ボーン氏に振付を依頼したのだという。

【次ページ】 振付師として感じてきた「ユヅの成長」

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