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杉原愛子「そういう目で見ないでほしいと言っても、見る人はいる」体操選手を狙う“性的撮影”…五輪では誹謗中傷も「選手村で話し合っていた」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2022/08/08 11:02

杉原愛子「そういう目で見ないでほしいと言っても、見る人はいる」体操選手を狙う“性的撮影”…五輪では誹謗中傷も「選手村で話し合っていた」<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

東京五輪でも華やかな演技で日本を団体5位に導いた杉原愛子(22歳)。あの五輪から1年、アスリートをめぐる問題について聞いた

 誹謗中傷がエスカレートしていた東京五輪の期間中は、選手村で情報交換をしていた。すると、同じアカウントから何人もの選手に同じような誹謗中傷のメッセージが届いていることが判明。中には「平均台で全員落ちて予選落ちしろ」や、ストレートに「しね」などのメッセージもあったという。平均台で落ちて……と書き込むのは体操ファンである可能性もある。胸が痛くなるような状況が、真剣勝負を繰り広げる大舞台の裏では起きていた。選手たちはこのようなこととも闘いながら、競技を行なっていたわけだ。

「東京五輪では、選手村の部屋でみんなでいろいろ話し合っていました。そうすると少し気持ちが楽になりましたね。“この人、何人に送ってんねん”というアカウントがあるのも分かりました」

杉原が明かす、東京五輪の裏で起きていた“偽らざる真実”

 SNSの問題ともリンクするのが、選手のメンタルヘルスの問題だ。東京五輪では、世界中が注目する女子体操のシモーネ・バイルズ(米国)が、メンタルヘルスの問題を抱えた状態で大会を迎え、団体総合決勝の途中で棄権したというケースがあった。

 杉原は団体総合予選から決勝までの中1日にあった公式練習でバイルズを見て、異変を感じていたという。

「練習を見ていると、バイルズ選手がすごく落ち込んでいる様子が分かりました。技の途中でやめてしまうなど、何か歯車が狂っていそうな感じで、私たちは練習に集中しながらも『大丈夫やろか?』と心配になるほどでした。原因は分かりませんでしたが、何かがあるのだろうということは周りから見て明らかだったと思います。『元気になってほしいな』と心配していました」

 バイルズは団体決勝当日の直前練習でも、ケガをしそうな危ない着地をしていたそうで、アップ会場では「あのバイルズに何が起きているのだろう」というムードになっていたそうだ。結果的にバイルズは決勝の1種目めの跳馬で予定していた技を跳べないという、まさかの失敗。2種目め以降を棄権した。

「バイルズ選手は異次元だと思っていましたから、あの姿を見て、やっぱり人間なのだなと思ったものです。一方で、あれほど突出したトップの選手でもメンタルヘルスは重要で、大変なのだということをあらためて感じました」

 これが、東京五輪の舞台裏で選手が直面していた偽らざる状況だ。

【次ページ】 「パリ五輪までやって」の声も…杉原が描く未来とは?

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