甲子園出場は高1夏だけで、憧れの高校日本代表に入ることができなかったが「あのとき坂井監督に個性をつぶさない指導をしていただいたお陰で今がある」と公弥さんは感謝する。坂井氏は最初の約束どおり、試合では宗隆に一度もバントをさせなかった。一塁から捕手にコンバートさせ、打者として将来に生かせる配球術、野球脳を身につけさせた。そういう恩があるから、宗隆は母校に感謝し、坂井氏への連絡を今も続けている。

今年の甲子園出場を決めた九州学院メンバーたち　©Yuki Kashimoto

「わたしは親バカですけど…」

　公弥さんとの「記事には書けないけどめっちゃいい話」は、けっきょく2時間に及んだ。どうしてこんないい話を、表に出さないのですか？　と聞くと「宗隆の成長の邪魔になるようなことは一切したくないんです。わたしは親バカですけど『バカ親』にはなりたくないんです」と言って、また「ワハハ」と笑った。

　人格者というのは、やっぱり親によるところが大きいのだな、と思った。そしていつか、許可をもらって、この家族を記事にしたいと思った。この取材で許可をもらえなかったのが、私の未熟なところだろう。公弥さんの電話は今ごろ鳴りっぱなしなのではないかと推測する。そんな騒ぎの中で、昨日はきっと、静かに家族だけで喜びをかみしめたに違いない。

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