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「病院の庭で首を吊ってやろうかって…」手術は15回以上、自殺も考えた女子プロレスラーKAORUが引退へ…語った“母と長与千種への感謝”
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byMarvel Compony
posted2022/08/04 17:00
8月8日、ついに引退試合を迎える女子プロレスラーのKAORU
あの“敗者髪切りマッチ”の思い出
――「敗者髪切りスキンヘッドタッグマッチ」(03年4月6日、横浜文化体育館)では、3人同時にスキンヘッドというマット界史上まれにみる名シーンを見られました。(※マネージャーのポリスも道連れ坊主に)
KAORU なかなか経験できないですよね。ちょうど髪の毛が傷んでたんで、これで健康な髪の毛が生えてくるなってうれしかった(笑)。髪への未練もなかったし、私たちが泣いて悲壮感を漂わせたところで、誰も同情してくれないでしょ。
――「GAEA」の肩書きを背負ったおよそ10年間は、どのようなものでしたか?
KAORU 所属としては、GAEAがいちばん長いんですよ。なので、GAEAなくしては語れないし、KAORUを作ってくれた、すごく勉強になった10年でした。Marvelousはね、もっとやってあげたかったなっていうのが正直なところ。旗揚げしたとき、すでに父の介護がはじまってたので、教えたいことはたくさんあったのにって、心残りがたくさんあるかなぁ。GAEAのときみたいに、それこそ朝から晩までずっとそばにいて教えるっていうことを、やりたかったですけどね。
KAORU引退へ「どんなに楽しくても次はない」
――Marvelousはまだ“6年生”ですが、彩羽匠選手を中心に次代を担える選手が増えてきました。
KAORU 時代と同時にプロレスの形も変わっているので、私が教えてもらうことも多かったですね。たくちゃん(彩羽)に、「練習つけて」って見てもらってました(笑)。(門倉)凛、(桃野)美桜と並んで、「今はこういう動きがあるんですよ」って言葉や体で教えてもらって、トレンドを学んでましたね。GAEA時代の私じゃ、考えられない(笑)。
――最後に、1年越しの“ハッテンハチ”が間近に迫った今の心境を聞かせてください。
KAORU ほんとに感謝しかないです。プロレスラーKAORUを生かしてくださって、ありがとうございました。最後になって、今は申し訳ない気持ち、お詫びの気持ちが勝ってるけど、リングに上がるときっと「楽しい!」がきちゃうと思う。でもね、どんなに楽しくても次はない。これで、安心して肩の荷を下ろせます。
父の幸雄さんは81歳で、要介護「4」。80歳の弘子さんは要支援。KAORUはすでに幸雄さんがお世話になっている施設で、支援サービスの職務に就いている。ゆくゆくは単身赴任中の夫と同居するが、当面のあいだは、2匹の愛猫と3人で暮らす。30代のときに自身と交わした「両親の面倒は死ぬまで見る」という誓約に、変わりはない。
■Marvelous【KAORU復帰&引退興行】8月8日(月)、後楽園ホール(開場17:30/開始18:15)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。